政府は10日、住宅を活用した宿泊サービス、民泊(住宅宿泊事業)にルールを設け、その普及を目指す民泊法案(住宅宿泊事業法案)を閣議決定し、国会に提出した。民泊の営業者、管理業者、仲介業者に届け出・登録を義務付け。民泊の年間営業日数の上限は180泊に設定した。民泊が生活環境を悪化させる場合には、都道府県や保健所を設置する市などが条例によって区域や期間を制限できる条項を設けた。法令違反に関する罰則も整備した。
閣議後の記者会見で菅義偉官房長官は、「民泊の健全な普及が図られ、ホテルや旅館とともに多様な宿泊サービスが提供されることで、訪日旅行者の利便性、快適性が高まることを期待したい」と述べ、2020年の訪日外国人旅行者数の目標4千万人の達成につなげたい考えを示した。
石井啓一国土交通相も記者会見で「急速に拡大する民泊サービスについて、騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルが社会問題となっていることや、観光旅客の宿泊ニーズが多様化していることなどに対応するため、一定のルールをつくって、健全な民泊の普及を図る」「今後は、適切な規制の下で、地域の実情にも配慮しつつ、ニーズに対応した民泊サービスの提供が可能となるので、プロの宿泊サービスであるホテル・旅館に加え、民泊という選択肢が加わることで、旅行者の多様化する宿泊ニーズに幅広く対応できるようになることが期待される」と述べた。
法案では、民泊の営業者に都道府県知事(または保健所設置市、特別区の長)への届け出を義務付けた。家主不在の物件で行われる民泊の管理を受託する管理業者は国交相に、民泊仲介サイトなど宿泊契約を仲介する仲介業者は観光庁長官に登録が必要になる。
民泊の営業日数の制限は、「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が1年間で180日を超えない」と定めた。日数の算定方法は今後整備される省令に定められるが、期間の連続、不連続を問わず、実際に宿泊した日数180泊が基準とみられる。民泊営業者は、宿泊日数を定期的に都道府県知事に報告する。
民泊営業者、管理業者には、宿泊者の衛生や安全の確保、宿泊者名簿の作成、宿泊者への騒音防止の説明、近隣住民の苦情への対応などを義務付け。民泊営業者は、届け出住宅ごとに指定の様式に基づいた標識を「公衆の見やすい場所」に掲げる必要もある。
都道府県などの条例による民泊の制限は、「騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる」と定めた。
条例による制限について石井国交相は「過度な制限を抑制しつつ、地域の実情が反映された対応がなされるよう、適正な運用に努めていく。今後、関係省庁とともに具体的な手続きの詳細は詰めていきたい」と述べた。また、会見では国交省側から、条例で営業日数を「ゼロ日にするのは基本的に適切ではない」との見方も示された。
一方で民泊の営業者、管理業者、仲介業者に対する国や都道府県などの監督権限を明確化。業務改善・業務停止命令、登録の取り消し、報告徴収、立ち入り検査などを可能にした。罰則も整備し、民泊営業者が虚偽の内容を届け出たり、業務停止命令に違反したりした場合には、6カ月以下の懲役、100万円以下の罰金が科される。