楽天トラベル(山本考伸社長)が「楽天アフィリエイト」を来年1月から本格導入し、全費用を契約宿泊施設の負担とする問題で、同社は10月30日、箱根温泉旅館協同組合に対する再説明会を箱根町総合保健福祉センターさくら館で開いた。参加した旅館経営者から契約内容の片務性を指摘する質問、要望が相次ぎ、3時間を超える長丁場の説明会となった。
9月30日に実施した第1回説明会で、同社の準備不足を指摘する声が多かったため、異例の再説明会開催となった。山本社長と羽室文博執行役員国内営業部長が出席。ていねいな受け答えで対応したが、大半の参加者の理解は得られなかった模様だ。
同社は、同旅組が契約の変更内容が不透明であると指摘し、開示を求めていた、「『楽天トラベル』新基本規約」と「楽天トラベルアフィリエイト規約」の原案を当日持参し、参加者に配布、説明した。
同規約原案は、翌31日、東京の全国旅館会館で開かれた同社と全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の「楽天アフィリエイト新システムに関する初協議」でも配布された。同規約の確定版は11月初旬に発表するとした。
楽天トラベルアフィリエイト規約の原案は、同社が来年1月から導入すると宣言している内容を明文化したもので、日本旅館協会や全旅連の本部、各支部から出されている撤回要請に対する譲歩は一切見られない。
第7条(成果報酬の原資負担)1項では「甲(契約宿泊施設)は、甲の施設において対象取引があった場合は、乙(楽天トラベル)がパートナーに支払った成果報酬の原資(以下『成果報酬原資』という」)を全額負担する」と規定。契約宿泊施設の全費用負担を明確化した。
また同条6項では「アフィリエイトパートナーの設置したリンク等を経由した宿泊施設か否か、その他月間成果報酬総額の計算については乙(楽天トラベル)の判断に従うものとする」とし、内容の非開示を明記した。
さらに同条7項には「原資負担の対象となる成果報酬には、施設ページへのリンク等を経由した場合だけでなく、本サービスに基づく他のリンク等を経由して最終的に甲の施設の宿泊予約をした場合も発生するものとし、当該他のリンク等を設置したパートナーに対する成果報酬原資は、甲が負担する」と記載。「例えば掃除機のアフィリエイト広告をクリックした利用者が、その後30日以内にA旅館の予約をした場合、A旅館はその1%を成果報酬型広告料としてアフィリエイトパートナーに0.3%をアフィリエイト利用料として楽天トラベルに支払う」(羽室部長)という事実を明らかにした。
京都府旅組に回答「一方的規約改定ではない」
京都府旅館ホテル生活衛生組同業組合(北原茂樹理事長、幾世英磨青年部会長)は10月30日、楽天トラベルから「楽天アフィリエイト導入の撤回要望書に対する回答」を受け取った。
同社は、同旅組が要望書の中で表明した「一方的かつ不平等な内容の新規規約の追加が、御社のビジネスパートナーとしての信頼性を棄損することに対する強い懸念」について次のように回答した。
「今回の取引条件の変更に関し、約2カ月にわたり、私(山本考伸社長)ならびに担当執行役員を中心に全国51カ所にてのべ51回の説明会を実施させていただき、内容変更をご理解いただくよう努力しております。また、規約を11月初旬に公開させていただき、ご検討に必要な時間を用意させていただいており、一方的な規約改定に適応しないと考えております」。
なお、“楽天アフィリエイト新システム”は契約宿泊施設に対して来年1月から自動的に適用開始となる。
旅館協会関西も回答書受け取る
日本旅館協会関西支部連合会(西村肇連合会長、朝野泰昌IT戦略部長)は10月29日、楽天トラベルから「10月21日付『楽天アフィリエイト施設負担』撤回申し入れ書への回答」を受け取った。
同連合会が指摘した独占禁止法抵触の懸念について、同社は「優越的地位の濫用と申される点に関しましては、弊社以外にも多数のオンライントラベルエージェント様が競争する中での課金ルールの変更になりますので、該当するものではないと考えております」と回答した。
山本社長(右)と羽室部長