東京都 観光部長 築田真由美氏に聞く


築田観光部長

東京都の観光産業振興施策

「持続可能な回復」へ 事業者に多くの支援策

 東京都は今年2月、新たな観光実行プラン「PRIME観光都市・東京 東京都観光産業振興実行プラン」を発表した。その意義やプランに基づいた今後の施策を東京都産業労働局観光部長の築田真由美氏に聞いた。

 ――今般新たに策定されたプランについて。その狙いは。

 「観光関連事業者の皆さまがこの2年以上、コロナで大変厳しい状況にあるのはご承知の通り。その一方で東京は、昨年の東京2020大会(五輪・パラリンピック)が成功を収め、世界中から注目を集めている」

 「私たちは東京2020大会に向けて、世界中の方々に東京観光を楽しんでいただこうと、受け入れ環境の整備や観光資源の磨き上げなど、さまざまな取り組みを進めてきた。東京2020大会は無観客での開催となったが、これまで取り組んできたことをレガシーとして活用し、以前のように多くの方々に東京観光を楽しんでもらいたいと考えている」

 「さらに、3密を回避した旅行スタイルやデジタル化の進展など、観光を取り巻く状況が大きく変化している。ただ単にコロナ前に戻るのではなく、これらの社会変化にもしっかり対応して、観光産業の復活と持続可能な回復『サステナブル・リカバリー』の実現を目指すことが今回のプラン策定の狙いだ」

 ――プランの概要について。

 「『観光産業の活性化』『社会変化等に対応した「新しい観光」の浸透』『持続可能な観光の推進』という三つの戦略、さらに『観光関連事業者の経営力向上への支援』『国内観光の活性化と国内外へのプロモーション』『あらゆる旅行者が快適に滞在できる受入環境の整備』などの七つの施策からなる。このほか三つの戦略を踏まえて『MICE誘致の推進』を取り上げた」

 「目指すべき将来像を、都民、経済、文化、環境という四つの視点から打ち出している。例えば経済の視点は『長期滞在の旅行者やリピーターの増加、MICE開催などにより消費額が拡大し、観光による効果を都民が享受できる都市』。2030年に向けた数値目標である政策目標も掲げ、『訪都国内旅行者消費額』を2019年の約4・8兆円から2030年に6兆円、『訪都外国人旅行者消費額』を2019年の約1・3兆円から2030年に2・7兆円超にすることをそれぞれ目指している」

 ――事業者への支援について、具体策は。

 「宿泊施設に関係するものでは、一つは経営環境の変化やワーケーション、マイクロツーリズムなど多様な顧客ニーズに対応するために事業者が行う施設整備等の取り組みを支援。施設改修費、備品購入費、システム関係費など、経費の2分の1以内(中小企業は3分の2以内)、1施設当たり上限500万円を補助する。来年3月末まで募集しているが、今年12月末までの申請分は3分の2以内(同4分の3以内)に拡充している」

 「この7月には『東京観光産業ワンストップ支援センター』を開設した。観光関連事業者のさまざまな経営相談にワンストップでお応えするものだ。専用のサイトも開設し、検索をかけると事業者に合った支援メニューが表示される。中小企業者向けの窓口は東京都中小企業振興公社にあるが、今回、観光に特化したものを新たに設置し、観光関連の皆さまにとって、より使いやすいものにした」

 ――都内観光促進事業「もっとTokyo」について。トライアルとして6月10日に開始したが、当初予定の7月31日で終了。その後、9月1日に再開した。

 「感染症の動向や専門家の意見も踏まえ、再開することとした。感染拡大の防止と社会経済活動との両立に向けた取り組みとして着実に進めていきたい」

 ――6~7月の利用実績は。

 「現在、実績報告を受けて集計中だが、これまで旅行を控えていた方にもだいぶご利用いただけたようだ。2020年10月から約1カ月間行った同様の事業では約6万泊の利用があった。今回はその規模以上のご利用があったようだ」

 ――旅館・ホテルからの反応について。

 「都が宿泊助成をしていること自体、『旅行をしていいんだ』というお客さまの機運醸成、さらには安心感にもつながっている、という声を事業者の皆さまからいただいている。都が観光事業者とともに感染防止対策にしっかり取り組んでいるという安全・安心のPRをさらに行ってほしいという要望もあり、私たちは海外も含めて情報発信をしているところだ」

 ――東京都における観光産業の重要性をどう認識するか。

 「ご承知の通り、経済波及効果が大きい。都内経済をけん引する重要な産業の一つだ。だからこそ、私たちは事業者の皆さまの取り組みをしっかりと後押ししなければならない」

 ――宿泊など、都内観光関連事業者に求めることは。

 「今まで説明したものはごく一部で、さまざまな支援策を用意している。ワンストップ支援センターも含めて、ぜひご活用いただきたい。私たちも制度のPRに努めていく」

 ――東京都の観光魅力を改めて

 「東京と一言で言っても大都会といわれる23区もあれば、多摩や島しょ地域もある。自然豊かな多摩や島しょには23区とは違う魅力がある。どちらも都民の皆さまに楽しんでいただきたい。また、感染状況が落ち着きましたら、都外の多くの皆さまにもお越しいただき、東京の魅力を体感してほしい」

 築田 真由美氏(つくだ・まゆみ)1964年生まれ。89年4月入都。10年7月総務局法規担当課長、15年4月産業労働局職員課長、16年7月総務局文書課長、19年4月株式会社東京ビッグサイト総務部長、20年4月産業労働局産業企画担当部長、21年4月から現職。

【聞き手=森田淳】

 
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