日本ホテル協会(中村裕会長)は4、5日の2日間、「第27回トップセミナー」をザ・プリンスパークタワー東京で開いた。会員ホテルの経営幹部28人が参加した。初日の第1講座「2016年オリンピック東京招致と大会の開催効果(宿泊・観光需要)」では、東京都東京オリンピック・パラリンピック誘致本部の村西紀章招致推進部副参事が、これまでの誘致活動の経緯や開催都市決定までのスケジュール、東京オリンピック開催によって観光業界にもたらされる経済効果などについて解説した。
2016年夏期オリンピック大会の立候補都市は、東京、シカゴ(米)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)の4都市。10月2日にデンマークの首都コペンハーゲンで開かれるIOC総会で開催都市を決定し、同日18時頃(日本時刻は3日深夜)に発表される。
IOC(国際オリンピック委員会)は世界中から選ばれた107人の委員で構成。開催都市はこの107人による投票で決まる。委員には元オリンピック選手が多いという。
村西氏は「オリンピック招致には最高の計画とロビー活動が必要」で「東京には大いにチャンスがある」と話した。理由として(1)競技会場の配置計画が東京・有明地区を中心とする半径8キロメートル圏内に納まる4都市の中で最もコンパクトな設計で、IOCが求める環境への配慮、選手の移動負担の軽減と輸送の効率化に合致していること(2)既存ホテル数が4都市の中で突出して多く、オリンピック開催時に毎回問題となる客室数不足の懸念が最も少ないこと──などを挙げた。
観光業界にもたらされる経済効果については、宿泊・観光需要で約2600億円が期待できるとした。内容は、大会約1カ前から各国選手団が全国各地で行う事前調整キャンプ(合宿)、大会期間中の宿泊需要、買い物、飲食需要など。
7月29日から8月14日の大会期間中の延べ宿泊需要を海外観客23・6万人、国内観客95・6万人の合計約120万人と試算。IOC委員、IF(国際競技連盟)、NOC(各国オリンピック委員)、スポンサー、メディアなどの大会関係者分だけで都心に1日4万室が必要で、既に279ホテルと4万5131室の提供契約を結んだという。
同セミナーでは2日間で6講座を開いた。残り5講座のプログラム内容は「新型インフルエンザ・パンデミック対応の実例〜ホテルでの対応策と行政との連携」(東京都総務局総合防災部・齋藤實課長、ロイヤルパークホテル・南安常務、シェラトン都ホテル大阪・市谷敏総支配人)、「企業トップの危機管理」(NPO広報駆け込み寺・三隅説夫代表)、「労働者派遣・紹介・請負の留意点及び法改正の動向〜人件費のコストパフォーマンスと助成金の活用」(全日本サービスクリエーター協会・志水光一理事)、「エコロジー経営を考える〜ハイブリッドホテルプロジェクト」(ホテルニューオータニ・志水肇代表取締役常務総支配人)、「働く人のメンタルヘルス〜自分も会社も気になるストレス1日決算主義の勧め」(横浜労災病院・山本晴義勤労者メンタルヘルスセンター長)。