期待と不安が交錯 緊急事態宣言の全面解除で旅館経営者


「早く完全終息を」 先の予約、多くが1~3割

 政府は5月25日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を全面的に解除。各自治体による観光振興策が徐々に始まるほか、政府による「Go To Travel(トラベル)キャンペーン」が7月にも開始の見通しだ。これら施策に全国の旅館・ホテル経営者は期待を寄せる一方、予約の出足の遅さや新型コロナウイルス流行の第2波を不安視する声も多い。経営者の思いや各宿の現状を聞いた。

 ■緊急事態宣言解除を受けての感想

 「ようやく」「一つ乗り越えた」と、安堵(あんど)の声が聞こえるものの、「先行き不透明」「第2波、第3波がいつ来てもおかしくない」など、不安の声が大勢を占める。新型コロナウイルスの感染拡大、それに伴う旅行の自粛が宿泊業界にいかに大きな影響を与えているかが改めて浮き彫りとなった。主なコメントを抜粋する。

 「ようやく、が最初に思ったこと。早く県境移動解除を出してほしい」

 「まずは一つ乗り越えたという感覚。ただ、第2波、第3波がいつ来てもおかしくないので不安だらけではある」

 「3月から続くコロナの経営に与える影響は甚大。第2波、第3波が心配だが、とにかくいち早い完全な終息を望む」

 「2月、3月には到底予想もできなかった事態となり、春の行楽シーズン、ゴールデンウイークと、例年とは全く違った数カ月を過ごしてきた。全国で緊急事態宣言が解除されたものの、まだまだ先行き不透明な状況に、国民一同不安しかないのではないか。これから暖かくなる季節。通常のウイルス通り、感染力が弱まり、収束に向かうことを願うばかりだ」

 「北九州市の感染者数を見て、第2波がすぐそこまで来ていると感じる」

 「宣言解除はされたものの、越県の自粛などもあり、ほとんどマーケットとしては回復が見られていない。母体の大きな施設はその分、経費も大きく、仮にあと3カ月、この状態に近い需要(予約率、稼働率)だと、経営自体が厳しくなってくるのでかなりの不安を感じている」

 「いつまでこの状態が続くのか、が最も不安なところ。7割経済といわれているが、恐らくわが業界は5割経済がいいところ。売り上げ5割であと1年持たせていく計画を立てなければならない、非常に厳しい状況。借り入れも据え置き期間が終わる3年後や5年後に、どう対応するか。(お客さまが)戻ったところで借り入れ負担が増えているので、多くの旅館はその段階でリスケ等の金融支援を必要とするだろう。コロナ対応で以前よりも人手や手間、消毒コストなどかかってしまうので、利益率は確実に下がる。業界全体で単価を上げられればいいが、安売りしてでも稼働を狙う旅館も増えると思う」

■予約の現状と誘客対策

 緊急事態宣言の解除を受けて、徐々に予約が入ってきたとするが、前年の1~3割程度がほとんどで、回復というには程遠い状況。自治体による県外客の呼び込みを6月19日からとする政府の基本的対処方針を受け、当面は県内や近県の利用客の誘致に力を入れるという旅館も目に付いた。以下に主な声。

 「まるで緩和ムードがなく、予約も入らない」

 「13日から営業再開予定で準備している。予約状況は、まだ10~15%ほどの動きしかない。まずは県内、域内のお客さまに来ていただけるようなところからアピールしていきたい」

 「新規予約の状況は鈍く、夏以降に関してはGo Toトラベルキャンペーンも報道に出ているので、消費者も『お得な旅行ができる』と、キャンペーンの概要が明らかになるまで少し様子を見ているのではないだろうか」

 「予約は動き始めているが、6月は7割減と予想」

 「予約状況は前年比マイナス80%近く。営業を再開するが、6月は既に半月ほど休館日を設定している。当面の誘客対策としては、近隣在住者をターゲットとした最安値プラン、リモートワークを推進するプランなど、新たなプランの造成に取り組んでいる」

 「6月5日からオープン。予約状況は、6月はまだ2~3割といったところ。リピーターとキャンセル者に対しての告知をしようと思っている。それだけでなく、旅館に依存しすぎない事業モデルも考えていきたい」

 「(緊急事態宣言が)明けても、思ったよりお客さまの戻りが遅い。直近だけでなく、本来ハイシーズンのはずの8月の予約もあまり入らない。雇用調整助成金をもらって休業した方がまだまし、といったところ。宿は5月8日から再開し、今は週末中心に営業している。6月は営業日を増やす」

 「宿の営業再開は6月1日からだが、6月はほとんど(宿泊客が)入っていない。7月も梅雨なので難しいだろう。雇用調整助成金をうまく活用して、休館日を増やして乗り切るしかない」

 「6月4日まで休館している。今回はⅤ字回復はとても見込めず、レの字程度に緩慢に回復していくと推定している。当面予測している客室稼働率は(第2波次第だが)、6月20~30%、7月下旬から30%、8月はよくて60%程度。単価は20%程度は下がると思う。中大規模のバンケットは全く見込めない。資金流出をどう最小限にとどめるかが12月までの最大の経営課題となる」

 「緊急事態宣言が解除され、徐々にではあるが夏の予約が入ってきた(例年に比べ50%だが)。しかし、経済活動を回すことと二次的感染防止はどうしてもトレードオフの関係性であることから、夏の最重要コンテンツである『海水浴・プール』の運営のあり方に地域で賛否両論あるのが実情だ。地域と観光業のコンセンサスをとりながら、何が地域にとって良いのかをすり合わせた中での再生が必要と感じている」

 
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