「1次産業(農業)、2次産業(食品加工)などすべての産業が、観光の対象となり得る」と本書。この意味で観光は総合産業だと指摘する。さらに観光立国実現のために国や地域が課題とする問題を指摘、国際競争力のある観光地づくりや人材育成の推進を説く。
温泉や旅館、外国人誘致を切り口とした地域活性化戦略のほか、外国を例に用いた新たな観光の動きなども記載。従来とは異なる総合的視点で捉えた観光政策と現場を踏まえた観光戦略をまとめている。
構成は8章。1章が総論としての観光政策と振興策、2章は観光政策の決定と外国人観光客の温泉観光誘致戦略、3章は観光の時代要求と余暇施設の変容、4章は中央アジアの現状とウズベキスタンの展望、5章は温泉旅館経営の現状と課題、6章は温泉旅館の経営戦略、7章は温泉観光地の現状と課題、8章は地域を振興させる観光戦略──となっている。
「日本各地では温泉を観光振興の要としている」と断言する著者は、温泉を中心にした地域振興と、温泉旅館の再生策などについても掘り下げている。温泉地への観光客誘致はもとより、「もてなし」の心で旅客を迎える温泉文化のアピールは、外国人に日本の文化を理解してもらうためにも有効だと訴える。
温泉旅館の活性化にも言及。旅館の体質改善や自己点検、景気の流れを読むことが重要で「収支のバランスを崩してまでの低宿泊料金の設定は得策でない」とくぎを刺す。企業間、異業種間での連携や危機管理も留意点として挙げている。