
発表する岡崎社長
日豪ツーリズム学会(小原芳明会長=玉川大学学長)は26日、「第6回研究発表会」を東京都町田市の玉川大学で開いた。岡崎彌平治・タカミヤホテルグループ社長(山形・蔵王温泉観光協会副会長)らが研究発表を行った。
オーストラリアン・ツーリズム・エクスポート・カウンシルの米田浩三アドバイザーによる基調講演「オーストラリア観光業が日本マーケットに求めること」に続き、日本旅行業協会研修・試験部の稲葉保子マネージャーが特別講演「トラベル・カウンセラー制度およびデスティネーション・スペシャリストについて」を行った。
研究発表では、日本旅行作家協会・オーストラリアグループ世話人の片山邦夫氏が「オーストラリア・ツーリズムにおける一考察」、観光庁観光資源課の鈴木一寛氏が「総合特区制度における通訳案内士の予見的研究」、神澤隆・玉川大学経営学部教授が「アジア太平洋地域における観光教育・研究機関のネットワーキングの可能性・UNAPETITの事例を軸に考える」についてそれぞれ発表。岡崎社長は「蔵王温泉におけるオーストラリア人マーケットの考察」をテーマに発表した。
岡崎社長は、蔵王温泉の現状について「92年に250万人だった入込客数が08年には150万人を割った。入込客数はスキー客、温泉客、登山客の合計だが、スキー客が150万人から50万人に減ったのが原因」と報告した上で「インバウンド客に活路を求めて、積極的に誘客活動を行い、実績が出てきている」と述べた。
また韓国人旅行客の誘致に着手し、その結果、「08年には過去最高の1万5千人を誘致したが、竹島問題とリーマンショックの影響で、09年は1500人になった」とこれまでの経過を紹介。
オーストラリア人の誘客では、10年前から蔵王の「温泉と樹氷とスキー」のイメージ戦略を始め「全100施設中で24施設が協力した蔵王温泉外国人宿泊統計調査で、09年は実人数4千767人、泊人数9千928人、また10年は実人数7千67人、泊人数1万5千865人だった」と披露した。北海道のニセコや、長野の野沢温泉と並ぶオーストラリア人御用達の人気スキーリゾートに育ちつつあることを示し、「オーストラリア人スキー客は平日を絡め何連泊もしてくれるので、地域全体が潤う」と述べた。
訪日台湾人客については「年間に1万5千人から2万人が訪れるが、ほとんどが樹氷だけを見て移動してしまう団体ツアー客。今後は台湾の旅行会社に台湾人向けのスキー教室プランを提案して、台湾人客の宿泊につなげたい」とし、誘客にさらなる意欲を示した。
最後に「ただインバウンド客は増えても全体の10%程度。オーストラリア人観光客の増加で日本国内でもニセコのブランドが上がったように、蔵王も“黒船効果”を狙いたい。インバウンド客への対応で旅館一軒一軒のサービスレベルを上げていきたい」と結んだ。

発表する岡崎社長