日本観光協会の西田厚聡会長と日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の舩山龍二会長は2日、馬淵澄夫国土交通相に観光関連予算を確保するよう要望した。11月中旬に行われた事業仕分け第3弾(再仕分け)で同予算が大幅に削減されたことを受けたもの。観光が「新成長戦略」の柱の1つとして位置づけられたにもかかわらず大幅削減されたのは「政策方針としての一貫性という観点からも、理解に苦しむ」として、必要額の確保を強く求めた。
両会長が国交相に会い要望書を手渡した。要望書は、事業仕分けで大幅削減の方向性が打ち出されたことに「非常に大きな驚きであり、極めて残念」と指摘。その上で、「一貫した方針の下、政策の実行と官民一体となった目標達成のため、観光関連予算として必要額を確保するよう強く要請する」とした。
観光経済新聞などの取材に応じた西田会長は、「観光が新成長戦略の中に盛り込まれ『さあこれから』という期待が高まった時にこんな事態になった。(再仕分けに)がっかりした」と肩を落とす。舩山会長も「仕分けには失望した。とても黙ってはいられない」と強調。
また、「産業立地がなかなか進まない中で、地域活性化策としてまず出てくるのが観光だ。地方も意気込んでおり、国の支援が必要だ」(西田会長)、「中国との問題もいろいろあるが、こういう時期だからこそ(海外との)交流を途絶えてはいけない。むしろ大いにやるべきであり、海外との宣伝予算を含め、削るのは問題だ。観光は最大の安全保障でもある」(舩山会長)と述べた。
再仕分けでは主力事業のビジット・ジャパン事業が3割削減、観光圏整備補助事業に代わる観光地域づくりプラットフォーム支援事業が5割削減などを求められた。観光庁の来年度予算概算要求額は今年度当初予算比3%増の約130億円。再仕分けの結果が予算編成に反映されると、来年度の主力事業の予算は大幅に減少することになる。
西田会長は「(事業)運営上の効率を高めるのは当たり前のこと」と仕分け作業に理解を示したものの「新成長戦略がなぜできたのかを理解して仕分けしてもらいたい」と指摘した。
再仕分けについては、廃止や縮小と判定された事業を所管する官庁の一部の政務三役が、作業のあり方を公然と批判する姿も見られた。
観光関連予算の確保を強く要望(写真右から馬淵国交相、西田会長、舩山会長)