日本経団連(御手洗冨士夫会長)は新たな雇用の創出と経済の中長期的な成長戦略を盛り込んだ「日本版ニューディールの推進を求める」と題した提言をまとめた。景気後退に伴う雇用環境の急激な悪化に対し、観光を含めた約30のプロジェクトを官民で実施することで歯止めをかけるとともに、雇用創出を図る。経済財政諮問会議が3月にも策定する成長戦略に反映させるよう働きかける方針だ。
提言は雇用創出と成長力強化の重点分野の1つに地域の活性化を挙げ、「地域が有する資源を最大限に有効活用し、新産業、新事業を育成することが不可欠」とした上で、観光を通じた地域活性化プロジェクトに取り組むよう求めた。
具体例として、(1)日本政府観光局(JNTO)を中心としたVJCの充実・強化(2)中国、タイ、マレーシア、インド、ロシアを対象にした訪日観光ビザの拡大(3)国内交通インフラの整備を通じた国内観光振興策の実施(4)日本と韓国の観光人材の育成に向けた産学連携の強化──を挙げた。
特にJNTOについては、国からの運営費交付金が削減されている状況を踏まえ、「国際観光プロモーション機能が発揮されるための環境整備のほか、海外でJNTOの活動に協力する民間企業の支援が必要」とバックアップ体制の強化を求めた。
産学連携では大学における観光系学部・学科の相次ぐ設置を受け、教育・研究活動に対する国の助成について検討するよう提言するとともに、インターンシップに対する支援制度(企業内研修に関わる人件費、学生の滞在費用の負担など)にも言及した。
また、政府の「ふるさと雇用再生特別交付金」により各都道府県に創設される基金について、「企業も拠出できる仕組みを設けるべきだ」と指摘し、官民一体の取り組みを強調した。