日本旅館協会は2月17日、東京都江東区の東京ビッグサイトで「旅館の持続化計画」と題したセミナーを開催した。明神館(長野県・扉温泉)の齊藤忠政社長を講師に迎えて講演を実施し、同館の先進的なSDGsに関連する取り組みをさまざまな事例を交えながら紹介した。
今回の講演のテーマは「地域と共に生きること」。冒頭、齊藤氏は自社のミッションとして「感動体験の創出と未来への希望」を掲げていることを示し、「お客さまはもちろん、関連業者など各パートナーに対してもこのミッションを果たし、持続可能な社会づくりに貢献したい」と語った。その実現に向け大切にしている考え方として「地域のモノ・コトを発信していく」「信州と世界をつなぐ」「エコロジーをスマートに伝える」「地球、健康、文化を大切にする」の四つを併せて列挙した。
齊藤氏は同館の経営に携わり始めた20年ほど前から、エコロジカルな施設の実現を目指して自社農園を開始し、2007年からは地元の食材を生かしたマクロビオティックな料理提供に注力し始めた。09年には同館が世界的なエコラベル「グリーンキー」の日本第1号に認定されるなど、2000年代初頭から環境に優しい宿づくりを進めた。環境への高い意識付けの契機については「鉄砲水が出て当館のお客さまの移動が困難になる、降雪の倒木により扉温泉で約130人が孤立するなどの出来事があった。環境の変化で最も影響を受けるのは、山間部に位置するわれわれのような施設なのではないかと考えるようになった」と振り返った。
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