日本旅行 執行役員グローバルソリューション営業本部 副本部長・訪日旅行営業部長 緒方葉子氏に聞く


訪日ニーズの強さ実感、今でもできることを

 ――会社で大規模な組織改正を行ったが、その中でインバウンドの位置付けは。

 本年より当社では新しい中期計画をスタートさせた。国際交流再開後は、インバウンド事業をソリューション事業、ツーリズム事業に続く三本目の柱に据える予定となっている。欧米豪からの観光団体、全世界を対象としたMICE団体、Web経由の宿泊販売、訪日富裕層などの従来路線を基盤としながら、このたびの中期計画でも柱となるJR西日本グループとの連携による新たな需要の開拓にも努めていきたいと考えている。

 ――昨年の取り組みは。

 コロナ禍が始まった頃から、先が見えない中で、とにかくできることをやってみようと、海外の旅行会社とさまざまな形でコミュニケーションを取ってきた。現在もその取り組みは継続している。

 また昨年夏に開催された世界のスポーツの祭典において、私どもはイギリス選手団の事前キャンプから帰国まで約2カ月間、滞在中のお世話を全面的に行い、久しぶりに訪日外国人のお客さまにサービスを提供する機会に恵まれた。

 事前キャンプは横浜市と川崎市がホストタウンだった。横浜市にキャンパスがある慶応義塾大学を加えた3者がコンソーシアムを組み、私どもはキャンプの事務局代行なども担当させていただいた。

 感染症対策が大変で、選手団が空港に到着してからホテルに入るまで、またホテルと練習場の間の毎日の往復など、動線をほかの人たちと完全に分離しなければならなかった。ホストタウンの人たちと選手との間で、さまざまな交流事業も計画されていたが、できずに残念だった。

 ただ、他国の取り扱いも含めて、一連の業務はわれわれにとって非常に勉強になった。外国の方と相手の言葉で直接会話ができ、意思疎通の仲介役となれることが、受け入れ側にとって強みになるのだと改めて分かった。

 ――海外の旅行会社とのやり取りは。

 ウェブで定期的にミーティングを行っている。

 昨年は観光客等の受け入れを実現することはできなかったが、コロナ発生以降から現在に至るまで、常に欧米のお客さまからは次の旅行シーズンの見積もり依頼は途絶えることなく継続しており、強い訪日ニーズがあることを実感している。

 諸外国では外国人に対して門戸を開いている国がかなりあり、「日本はまだなのか」とよく言われ、春の予約ですらまだキャンセルをしたくないと言ってくれている。

 ――日本の水際対策はかなり厳しい。

 隔離日数が長いという指摘はかなりある。が、水際対策の段階的緩和については期待している。

 昨年末に観光庁主導のインバウンド受け入れの実証実験が予定され、当社も準備をしていたのだが、オミクロンの感染拡大で実施1週間前に中止になってしまった。そのツアーを造成する際に自治体に声掛けをしたのだが、受け入れに慎重なところも多かった。

 ――実証実験は感染状況が落ち着けばいずれスタートする。

 小規模分散型、なおかつ管理型ということで、まずは実験を行い、その後は段階的に一般客を受け入れることになる予定だ。

 私どもがイギリスの選手団を受け入れた経験からすると、皆さん非常に協力的で、ルールをしっかり守ってくれる。マスクの着用や手指の消毒など、私たちもしっかり注意喚起をするので、地域の方々にもぜひご理解をいただき、受け入れに協力をいただければと思う。

 ――今年の会社の重点施策は。

 今だからできることとして、感染防止対策を含めた旅行の安心安全を実現する旅程構築に向けての整備や、欧米を中心とした訪日客からのニーズが高いSDGs対応メニューの開発、生産性向上に向けた訪日旅行手配管理システムの刷新などを手掛ける予定にしている。ヨーロッパの人の話では、化石燃料を多く使う飛行機を使うことに、後ろめたい気持ちを持つ人が増えている。ロングホールを売る現地の旅行会社の人が気にし始めており、何か環境に配慮した素材を盛り込まないとお客さまに受け入れられないと思っている。私どもとしては、「赤い風船」で既に取り組んでいるカーボンオフセットを取り入れた商品などをインバウンドでも提案したいと思っている。

 ――インバウンドの回復はどこからが一番早いか。

 さまざまな話を聞いた範囲の私見だが、個人の財布が痛んでいないという意味では、国のサポートがしっかりしている欧米からという気がするが、絶対数の多いアジアにも期待している。

 ――日旅連会員に一言。

 当社は時代の変化に対応すべくさまざまな領域に挑戦しているが、海外の企業や旅行会社からのインバウンドの分野は完全に従来型の旅行業の世界。再開した暁には日旅連の皆さまには引き続きお世話になると思う。

 海外のお客さまや旅行会社からどんなことが要望されているのか、ほかの国のホテルがどんな対応をしているのかなど、情報をフィードバックして、SDGsなどの新たなニーズへの対応の面などで共に勉強をさせていただき、連携を図っていきたいと考えている。

 

日本旅行 緒方執行役員

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