日本旅行 取締兼執行役員事業共創推進本部長 吉田圭吾氏に聞く


日本旅行 吉田取締役

新たなビジネス創出へ、旅連と連携促進

 ――事業共創推進本部とはどのような部署か。

 昨年1月に立ち上げた。非旅行業分野の開拓と取り扱い拡大、従来の枠組みを超えた新たなビジネスの創出に向けて、社内での組織横断的な検討と、異業種を含めた他社との連携を先導して進める部署だ。重要なセクションであり、当初は社長が本部長を兼任していたが、同年4月から私が担当している。

 これまで私たちは旅行が主な商材だった。企業や学校、自治体に営業で伺う際、「旅行の予定はありませんか」とお聞きし、企業であればMICEや親睦旅行、学校であれば教育旅行のニーズがあって、初めてビジネスが成り立っていた。

 そのような仕事のやり方を変えていこうということだ。旅行ありきではない。社会やお客さまそれぞれの状況や事情を先取りし旅行に限らずさまざまな課題解決の提案をする。われわれが持つリソースを踏まえて、不足があれば共に進める協業パートナーを探し、連携する。このような取り組みを行う推進役となるのがわれわれ事業共創推進本部だ。

 ――具体的な取り組み事例をいくつか。

 昨年9月に「つなぐむ」という名称のクラウドファンディング事業を始めた。地域活性化につながるプロジェクトを進める全国各地の自治体や事業者と、プロジェクトを応援する人をつなぐマッチングサイトだ。サイトの運営を通して地域活性化を支援する。

 この仕組みを活用し、沖縄・石垣島でのビーチクリーン事業を手掛けた。ツアー参加者に海岸のごみを拾ってもらう。集めたごみのうち、ペットボトルなどプラスチックごみは加工し、Tシャツやポーチを作製、参加者にお持ち帰りいただく。サステナブルについて考えるきっかけをつくり、旅行後の一人一人の行動変容を促すプロジェクトだ。SDGsにつながる学びのプログラムとして、今後広げていきたい。

 他にも、JR西日本のグループ会社と協業し、通訳ガイドのマッチングプラットフォーム事業を始めた。VR空間を活用したオンラインの多言語プラットフォームで、日本各地の情報をまさに通訳ガイド視点で海外エージェントに紹介するもの。日本各地のPRとともに、エージェントが映像を見て、「次のツアーはこのガイドさんでお願いします」と、エージェントとガイドをつなぐマッチング機能も備えている。

 その他、地方鉄道会社と組んだ観光地の再開発プロジェクトや、銀行と組んだ金融教育の開発など、さまざまな事業を現在進行中だ。

 行政関係では、国や自治体のワクチン接種事業を手掛けており、200を超える自治体から発注をいただいた。またプレミアム商品券事業、感染防止を目的とした飲食店の認証事業も受注している。

 現在は、多くの人手が必要となる事業の受注が多いが、これからはわれわれが旅行業で培った知見を生かした、コンサルティング事業などにも手を広げていきたい。

 ――旅館・ホテルに裨益(ひえき)する取り組みは。

 お互いがウィンウィンになれるような新たな事業を連携して創出できればと考えている。サブスクリプションなど、旅館・ホテルでも新たなビジネスモデルが生まれている。私たちの新しいつながりや経験値をうまく掛け合わせ、新しい事業を皆さまと共創していけたらと思う。

 私が東北に勤務していた際、旅館・ホテルの皆さまとは大いにお付き合いをさせていただいた。皆さまはそれぞれ施設をお持ちで、常に改修・改装が必要となり運営に多くの資金がかかる。ご苦労している姿を目の当たりにする中で、なかなかお役に立てないと忸怩(じくじ)たる思いがあった。そんな思いを払拭(ふっしょく)したい。

 ――今年度の重点課題は。

 新たなビジネスの拡大に向けた組織横断的な検討と異業種連携の促進に継続して取り組むことが最大の課題であり目標だ。

 ――観光業界の今後について。

 旅行したい、動きたいという需要は相当数ある。今の状況がある程度落ち着けば、需要は必ず戻る。ただ、形態が変わり、個人化、小グループ化により傾くだろう。

 一昨年のGo Toトラベル事業では、これを機にいつもよりぜいたくに泊まろうという動きがあった。非日常で上質なおもてなしを経験すると、忘れられないものだ。新しい顧客層の開拓も加速するだろう。

 旅館・ホテルはただ、泊まるだけではなく、お客さまにとって新たな楽しみや発見が得られるような、エンターテインメントの機能が求められそうだ。

 ――日旅連会員に向けて。

 旅連の皆さまがわれわれにとって大切なパートナーであるとの認識は全く変わらない。今までは旅行を通した送客に限られていたが、今後は事業パートナーとして、新たなビジネスを共に創り上げ、皆さまのお役に立てるよう努めていきたいと考えている。

日本旅行 吉田取締役

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