日本国際観光学会(415会員、松園俊志会長=東洋大学教授)は15日、「日本復興への道—観光の力を考える」を大会テーマに第14回全国大会を亜細亜大学(東京都武蔵野市)で開いた。
開会あいさつで、加藤英一副会長(東海大学教授)は、「本学会は、正会員363人、学生会員47人、名誉会員・賛助会員5人の合計415会員からなる大規模な学会だが、本学会の特長である産官学の幅広いネットワーク連携を生かして観光で日本を元気にしていきたい」と宣言した。
基調講演は、高級旅館30軒が加盟する、訪日外国人富裕層旅行客向け販促組織「ザ・リョカン・コレクション」を運営するアール・プロジェクト・インコーポーレーテッドの福永浩貴社長による「『和』が日本を救う」。
福永氏は富裕層旅行市場の現状について「全旅行客数の3%に過ぎない富裕層旅行者が、旅行消費金額全体の25%を支出している」と紹介。その上で「ルイ・ヴィトンは富裕層向け鞄ブランドとしてイメージを確立したことにより、皆が欲しがるブランドとなり、ビジネスで成功を収めた。まず富裕層旅行者に、日本文化をあこがれのブランドとして見てもらうことが重要」と強調、日本旅行、日本旅館のプロモーションには焦点を絞った戦略的情報発信が欠かせないと指摘した。
続くパネルディスカッションでは、安田彰・大会実行委員長(亜細亜大学教授)をモデレーターに佐藤寿美・花巻温泉ホテル千秋閣支配人、島川崇・東洋大学准教授、福永社長の各氏が登壇、震災後の東北観光復興への展望を探った。
震災直後の状況について佐藤氏は「3~5月の4万人分の予約がすべて取り消しになった。インバウンド客は5千人分がキャンセルになった」と報告。ただ6月末に平泉の世界文化遺産登録が決まったこともあり、9月以降は個人旅行客を中心に復調、紅葉シーズンの10月は昨年の7~8割まで予約が戻ってきていると話した。
東北福祉大で教べんを執っていたこともある島川准教授は「被災地の人々がいま恐れているのは『無関心』になられること。阪神淡路大震災では1年半で一般の人々は被災地に対する関心を失った」と警鐘を鳴らした。
福永氏はザ・リョカン・コレクション加盟旅館全30軒のインバウンド客の回復状況について「5月下旬にまず米国人、続いて香港、シンガポールなどの東南アジアからの旅行客が訪日するようになった。フランスなど欧州からの訪日客も最近やっと戻ってきた」と話した。
また東北の観光の復興へ向けた今後の道のりについて、各氏は次のように語った。
「できるだけ多くの方に現地をみてほしい。『東北復興MICE』のような形で、東北でさまざまな会合を開いていただくことが現地への観光支援になる」(佐藤氏)、「旅行業界は東北への送客にむしろ積極的になるべき。(被災し、復興途上にある)東北のいまの姿を見たい、訪れてお金を落とすことで支援したいという日本人、外国人はたくさんいるはず」(島川氏)、「観光とは“文化”であり、“ストーリー”だ。観光業界は国内外への情報発信を積極的に行い、全産業をけん引するトップセールスマンにならなければならない」(福永氏)。
写真左から安田、島川、佐藤、福永の各氏