日本商工会議所「21年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」


 日本商工会議所はこのほど、「2021年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を政府や自民党などに提出した。新型コロナウイルスの影響の長期化を踏まえ、中小企業の事業継続支援とコロナ禍の先を見据えた地方創生の推進などを求めた。(下記に観光関係の要望・意見の概要など)

 基本的考え方

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、わが国経済は2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で27.8%減となり、リーマンショック後の09年1~3月期の年率17.8%減を超えるコロナショックというべき未曾有の影響を受けている。

 新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が解除され、感染拡大防止と経済活動を両立しつつ、正常化を目指すステージへと移行したものの、再び全国で新規感染者が増加し、地方自治体独自の緊急事態宣言が発令されるなど再度の経済活動自粛の動きがあるが、全国の中小企業・小規模事業者の事業継続と雇用維持の努力は限界に達しつつある。調査会社は8月中旬、廃業を検討する可能性のある中小企業は8.5%にのぼる(30万社超が廃業の恐れ)との調査結果を公表した。

 現在のところ、新型コロナウイルスの完全な終息が見通せず、経済活動が正常化に至るまでに長期間を要することが想定される。今後、さらなる感染拡大が続き再度の全国規模の緊急事態宣言という事態に陥れば、倒産・廃業が急増しわが国経済の崩壊を招きかねないことが、強く懸念される。
政府はこれまで、令和2年度補正予算・第2次補正予算・予備費による持続化給付金や家賃支援給付金、持続化補助金、雇用調整助成金、特別貸付や無利子融資など様々な資金繰り支援等の大型の緊急経済対策等により、事業者支援に力強く取り組んできた。

 全国の商工会議所は1月29日に新型コロナウイルスに関する経営相談窓口を設置し、経済活動維持に欠かせないエッセンシャルワーカーとして感染リスクを抱えながらも、事業者の資金繰りなど各種経営相談に対応するとともに、国・都道府県・基礎自治体からの様々な要請を受け各種支援策の周知・活用支援を行うなど、事業者に寄り添った支援を実施してきた。政府は、地域経済や雇用を支える中小企業の経営者の心が折れずに、今後も事業継続に希望を持つことができるよう、より一層の支援策を迅速かつ継続して行うことが極めて重要である。

 当面は、コロナ禍からの再起に向け、感染症対策と経済活動の両立が必要であり、新たな感染の波が発生しても再開した活動のレベルを極力落とさずに済むよう、検査体制の拡充と医療提供体制の安定化が急務である。新型コロナウイルスの感染が一定の収束を見通せた段階では、本格的に幅広い消費意欲を喚起するような対策や地域経済の活性化に向けた取り組みが重要である。

 一方で、わが国は人口減少・少子高齢化や地域経済の疲弊など、従前から抱えている構造的な課題にも直面している。課題解決の重要なカギは、今や世界第31位にまで落ち込んだ1人当たりGDPの向上であり、生産性の向上に向けデジタル技術の実装を急ぐとともに、価値ある独創的な製品やサービスの創出、設備投資や国内外の販路開拓など付加価値の向上が必要である。

 さらに、サプライチェーン全体や地域経済全体など面的な競争力強化に向け、大企業と中小企業の新たな共存共栄関係の構築が必要であり、「パートナーシップ構築宣言」の賛同企業を増やし、宣言内容の実行等を通じてコロナ禍後の未来を切り拓くことが肝心である。

 また、コロナ禍によって東京一極集中のリスクやコストが予想以上に大きいことが判明し、地方への関心が高まっている中、短期的効率性から長期的耐久性へのシフトや集積と分散のリバランスの観点から、地方移住促進や魅力的な地域づくり等により、地方創生の推進に改めて強力に取り組む必要がある。

 さらに、追い打ちをかけるように、今年度も激甚化する大規模自然災害が頻発しており、過去の大規模自然災害の被災や今年の新型コロナウイルスの影響により、二重苦・三重苦の状況に陥っている場合もあることから、被災した中小企業・小規模事業者の迅速な事業再開支援を行うとともに、中小企業経営の強靭化を図り、災害に強い国づくりを進める必要がある。併せて、発生から間もなく10年となる東日本大震災から確実な復興・創生を図るための支援を欠かしてはならない。

 以上を踏まえ、21年度中小企業・地域活性化施策に関し、下記の実現を強く要望する。

Ⅰ、新型コロナウイルスの影響の長期化を踏まえた中小企業の事業継続支援とコロナ禍の先を見据えた地方創生の推進(略)

Ⅱ、「価値創造企業に関する賢人会議」の成果実現等による中小企業の生産性向上(略)

Ⅲ、観光産業の持続的展開支援と民間主導のまちづくり支援、高いストック効果を持つインフラの実現による地域活性化

【重点要望項目】

1、観光産業の持続的展開への支援(主な要望先は国土交通省、観光庁、経済産業省、厚生労働省)

(1)安全・安心対策の強化とその見える化の支援

 (1)事業者、観光地、および旅行者における感染拡大防止の徹底

 (ⅰ)観光関連各業界のガイドラインの遵守徹底とその支援
 (ⅱ)感染予防等安全・安心対策を講じている事業者や地域であることの見える化支援
 (ⅲ)地元の大学等医療・研究機関等との連携協力による観光事業者における感染防止対策強化の促進に対する支援
 (ⅳ)旅行者向け新しい旅のエチケットや新たな生活様式の実践例など社会生活におけるガイドラインの周知徹底

 (2)3密回避・非接触型事業運営を図る事業者への支援 

 (ⅰ)現場で求められる新しいビジネス様式(ソーシャルディスタンス確保など)への対応と採算性確保の両立推進に対する支援
 (ⅱ)飲食店におけるテイクアウト事業の展開やホテル客室のリモートオフィスとしての貸し出し等、ピンチを商機に変える事業者の取り組みに対する強力な支援
 (ⅲ)新型コロナウイルスに対して効果のある消毒・殺菌方法の確立とその周知およびこれに取り組む事業者に対する助成
 (ⅳ)鉄道・空港をはじめとする交通機関や公共機関におけるサーモグラフィーの設置拡充のための事業者の負担軽減

(2)地域における観光戦略の見直しと弾力的な需要喚起策の展開への支援

 (1)地域の強み、狙うべき誘客ターゲットの掘り下げへの支援

(ⅰ)地方体験やアドベンチャー・ツーリズムなど、コロナ問題の中でより需要が高まることとなった豊かな自然や古民家等の地域資源を生かした観光コンテンツの開発に対する支援
(ⅱ)地域としてのインバウンド客の関心事の研究と地域特性とのマッチング検討を推進のためのビッグデータ活用支援

 (2)地域プロモーションの展開支援、需要喚起策の柔軟な実施

 (ⅰ)日本政府観光局が行うビジット・ジャパン事業をはじめ、インバウンド回復期を見据えた海外プロモーション事業の推進
 (ⅱ)旅行消費の8割を占める国内旅行の本格的な需要回復期に向けた全国的な地域プロモーションへの支援
 (ⅲ)将来的な誘客のための疑似観光を体験させる、ネットやVR(仮想現実)の活用促進支援

(3)観光客の地方分散および需要の変化に対応した事業投資の支援

 (1)観光需要の地方分散を促進する交通ネットワークの整備拡充

 (ⅰ)主要交通拠点と観光地、観光地相互間の2次・3次交通網の整備拡充
 (ⅱ)高速交通機関と地域交通機関、高速交通機関間(空港と新幹線等)の有機的連携(接続の効率化等)、観光客目線に立ったMaaSシステムの構築に対する支援
 (ⅲ)自動運転技術の実装化、シェアサイクルなど多様な交通手段活用の促進

 (2)地域の観光産業における新たなビジネスモデルの導入促進

 (ⅰ)地域の宿泊業と飲食業が一体となって進める泊食分離の実施支援
 (ⅱ)国際的にも一般的なルームチャージ制への転換、大部屋の分割個室化を進めるための投資に対する補助・税制支援
 (ⅲ)MICEの運営や観光による地域経営に取り組む人材の育成に対する補助

 (3)ビジネス需要の取り込みによる地域観光産業活性化に向けた支援

 (ⅰ)サテライトオフィス、テレワーク、ワーケーション需要の取り組み、そのための設備・施設整備に対する支援
 (ⅱ)ブレジャー(ビジネス客による観光・レジャー)需要に応える観光・体験サービスの魅力向上、地域特産品・土産品の販売拡大支援

2、地域主体の豊かな暮らしを実現する民間主導のまちづくり支援(略)

3、強靭な国土をつくり、地域の成長基盤を支える社会資本整備の推進(略)

Ⅳ、頻発する大規模自然災害からの復旧・復興(略)

Ⅴ、東日本大震災からの確実な復興・創生(略)

 

 
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