日本は最重要市場 ブランドUSA 社長兼CEO クリス・トンプソン氏に聞く

  • 2023年8月29日

ブランドUSA 長社長兼CEO クリス・トンプソン氏

観光業以外の雇用も創出 コロナ禍で旅行の価値向上

 ――ブランドUSAとは何か。

 「米国の公式観光促進団体だ。海外からの旅行者数、国内の消費額、海外旅行市場におけるシェアを増やすことを通じて、米国経済を活性化し、世界中で米国のイメージを高めることを目的に設立された組織となっている」

 「ブランドUSAは、2009年の旅行促進法により、国内初の官民パートナーシップとして設立され、11年5月に活動を開始した。最高の旅行先としての認知を広げ、米国の査証と入国ポリシーを伝えるために、世界各地でマーケティング活動を展開している」

 ――米国は海外からの観光客をどのように位置づけているのか。

 「米国を訪れる海外からの旅行者は、100万人を超える米国の雇用を支え、米国経済のほぼ全ての部門に利益をもたらしており、国内の経済成長を促す最も有効な要因と捉えられている。海外からの旅行者は平均して国内の旅行者よりも多くの時間とお金を旅行に費やし、より多くの目的地を訪れるため、価値が高い市場セグメントとなっている。ブランドUSAは設立以来、何千ものパートナーと協力して、旅行目的地としての米国と米国内での多様な旅行体験を世界中に広めてきている」

 ――ブランドUSAは具体的にはどの程度、米国経済に貢献しているのか。

 「オックスフォード・エコノミクスの調査によると、ブランドUSAのマーケティング活動は、過去9年間で、米国への旅行者数770万人の増加、米国経済に対する560億ドル(日本円で約7兆4千億円)の経済効果をもたらし、毎年平均4万人の雇用を支えてきた。そして何より重要なのは、ブランドUSAのマーケティング活動によって生み出された仕事の約半分は、製造、建設、金融、小売など、旅行や観光業界以外のものであるということだ」

 ――日本市場をどのように捉えているか。

 「2019年の水準に回復するのは2025年以降というのが各種調査による予測だ。ただ私は、もっと早い段階での回復に期待している。実際、23年1~5月の訪米日本人客数は前年同期比347%増で、国際市場の中で最も高い伸び率を記録した」

 「コロナ禍前、米国にとって日本は世界4位のインバウンド市場だった。国境を接しているカナダ、メキシコを除くロングホール(長距離フライト市場)に限って言えば、英国に次ぐ2位。円安などにより日本では海外旅行全体の回復が遅れているが、日本には英国を抜ける潜在力があると考えている。ブランドUSAは主要11市場を重要視している。中でも日本は決して外すことのできない最重要市場だ」

 ――ブランドUSAの活動資金はどのように捻出されているのか。

 「私たちの運転資金は、観光局、旅行会社、民間組織や非連邦政府からの寄付金と、査証免除プログラム(VWP)を使用して米国を訪れる海外からの旅客から集めた資金からのマッチング・ファンドから構成されている。米国は日本を含む40の国と地域に対して査証免除プログラム実施している。同プログラムでは、電子渡航申請システム(ESTA)を使って渡航認証の承認を受ける必要があり、申請料金は1人21ドルだ。ブランドUSAは、これらによって年間最大200万ドルの活動予算を確保している。なお全米各地のDMOについては、宿泊税や地方自治体との各種連携により活動資金を獲得している」

 ――DMOの役割とは何か。

 「DMOの役割はここ10年で、デスティネーション・マーケティング・オーガニゼーションからデスティネーション・マネジメント・オーガニゼーションへと変化してきている。つまり、観光に来てくださいと呼びかけるだけでなく、どの時期にどの地域にどのような人々を呼び込むかをマネジメントすることが、DMOにとって重要になってきている」

 ――コロナ禍で旅行市場は変化したと思うか。

 「旅に出て新しい体験をすることで人間は成長できる。学ぶことができ、未知文化に触れることができ、新しい人と出会うことができる。パンデミックで世界がこのことに気づいた。旅行の価値、プライスポイントが上がった」

 

 クリストファー・L・トンプソン 1983年旧フロリダ州商務省傘下の同州観光局に入局。86年国内市場担当部門長に就任。88年フロリダ州レオン郡観光開発評議会の初代エグゼクティブディレクター、91年フロリダ州タラハシー地域観光局の社長兼CEO。97年フロリダ州観光局パートナー開発担当上級副社長。03年同観光局CEO、09年同社長兼CEO。12年にブランドUSA入局。【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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