日の丸自動車 副社長 富田哲史氏に聞く


富田副社長

バス事業の多様な展開

オープントップや水陸両用運行 ゲームコンテンツと連携企画も

 ――会社の概要を。

 「タクシーや観光バスなど運輸に関わるところを核としてグループを形成している。観光バス会社は4社あり、関東の日の丸自動車興業とHMC東京、関西の明星観光バスと中央交通バスとなっている」

 ――都市観光事業に積極的だ。

 「団体移動の輸送を中心としていたが、規制緩和が行われてから、他からも自由に参入できるようになり、その中で成長していくには厳しくなっていた。ビジットジャパンキャンペーンが開始された際に、団体の移動だけではなく、個人のお客さまを対象とした事業を模索していた段階で、都市観光事業への参入を決め、2000年に開始。現在の無料巡回バスは、東京の丸の内、日本橋、人形町の三つの拠点で運行している(コロナの影響で現在、お台場は中止)」

 「決められた停車場に運行ルートを作って常に15~20分間隔で運行する事業モデルで運賃は頂戴していない。企業などからの協賛金を運行費として充当している。地域のお客さまを誘客する手段として進めているが、地域経済に貢献できる取り組みと自負している」

 ――コロナの影響は。

 「団体移動が制限されているため厳しい状況だ。都心の観光バス会社の売り上げは(コロナ前の)2019年と比較すると20%程度かと思うが、当社も同じ。ただ違うのは、先ほどの無料巡回バスや都市観光事業は団体とは全く違うので、19年比でいうと50%は戻っている。また、04年に始めたオープントップの2階建てバスは、個人のお客さまを対象に東京と京都を拠点に気軽にいつでも乗車できる体制を整えている。1周1時間から1時間半ぐらいの運行ルートを設定し、手頃感のある料金にして提案している。団体移動だと長時間バスの中にいることになり、コロナが気になり敬遠されがちだが、スカイバスはオープンエアで、乗車時間もそれほど長くない」

 ――水陸両用バスも好評と聞いた。

 「東京のお台場、豊洲、東京スカイツリーと、横浜のみなとみらいで運行している。リアルな街を楽しく見せるため、短い時間ではあるが、非現実的な車両を用意してアトラクション感覚で楽しんでもらえている。オープントップの車両は29台。水陸両用バスは7台所有しており、地域から依頼をいただければ地方にも貸し出す。昨年は青森県の奥入瀬渓流や、栃木県の日光、富山県の立山黒部アルペンルートなどにお貸しした」

 ――今後、力を入れていく分野は。

 「学生や、教育旅行など、比較的若い層を取り込みたい。彼らの興味のある領域はアニメやゲームだったりするが、そういったコンテンツを持っている事業者と連携している。最近では、あるゲームのユニットのアイドルと連携したツアーを造成した。また、アイドルユニットのラッピングを施した水陸両用バスを走らせたりもしている」

 ――温泉旅館との関係は。

 「都心から200~300キロほど離れていて、比較的大規模な温泉旅館・ホテルと連携している。誘客支援をはじめ、首都圏から送迎を行う。地方はどうしても交通インフラがネックだが、宿泊プランとセットにした輸送手段となる観光バスがあることで、首都圏のお客さまを取り込める」

 ――ITを駆使した誘客を提案している。

 「今までは観光バスなど特殊な車により非日常を演出できた。これは大切なことでこれからも行っていくが、今後はこれに付加価値を加える必要がある。無料巡回バスはさまざまな場所からお客さまに来ていただき、その場所を巡回してもらうことで地域活性化につながっている。ただ、そのお客さまの属性までは分からないが、ITを活用すれば個人情報は別として属性や、街の中の移動ルートなどが分かる。そういった情報を組み合わせれば、さらに価値の高いサービス提供が可能になる」

 ――AR(拡張現実)も取り入れている。

 「屋根の付いたバスの2階部分を改装。窓に全面透過型のディスプレイを貼り付け、そこに映像コンテンツを流す試みを協業で2月から開始した。都市観光の課題は商品の魅力を高めるために、あらゆる場所に行く必要があるが、実際には無理だ。しかし、透過型ディスプレイとコンテンツを組み合わせることによって、その場所に行かなくとも、その観光地を案内できるようになる。映像を含めて案内ができるので満足度も高い」

 とみた・てつふみ 1979年、東京都出身。上智大学卒。2006年、日の丸自動車興業入社。20年から現職。

【聞き手・西巻憲司】

 
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