旅館で働く人々が自館の魅力や仕事にかける思い、具体的取り組みをプレゼンテーションする「第1回旅館甲子園」が2月20日、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれ、宮城県青根温泉の「流辿別邸 観山聴月」(りゅうせんべってい・かんざんちょうげつ)が最高賞のグランプリを獲得した。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部(横山公大部長=高知県・土佐御苑専務)が主催。部員を中心に関係者800人以上が観覧した。
「旅館で働く人にスポットを当て、仕事の魅力を語ってもらうことで、宿に就職したり宿を利用したりする若い人たちを増やしていきたい」と、横山部長の発案で初めて開催した。
全国の青年部旅館・ホテル約1600軒を対象に出場者を募集。各都道府県青年部長の審査を経て22軒がエントリーした。この中から10人の審査員(委員長=佐藤信幸全旅連会長)が書類審査を行い、当日出場する5組のファイナリストを決定した。
出場したのは観山聴月ほか、「鬼怒川温泉ホテル」(栃木県)、「越後湯澤 HATAGO井仙」(新潟県)、「和歌の浦温泉 萬波」(和歌山県)、「竹と茶香の宿 旅館樋口」(島根県)の4軒。
5組はそれぞれ15分の持ち時間でプレゼンテーション。審査は「発表者がいきいきと輝いているか」「発表に共感、感動できたか」などを基準に行い、審査員の事前の書類審査(持ち点10点)、当日の審査(同80点)、来場者の投票(同10点)の合計100点の中から最も多く得点を獲得した組をグランプリとした。
プレゼンの順番は事前に行った抽選会で決定。1組目のHATAGO井仙は、経営理念の確立で社員が成長し、客数と売り上げが伸びた事例、2組目の鬼怒川温泉ホテルは、メーンバンクの破たんから宿の再生に向けた現在までの取り組みをそれぞれ述べた。
3組目の旅館樋口はプライベートも仕事も大切にする社員の思い、4組目の萬波は、新しい経営陣に引き継がれた際、もてなしに一層力を入れた事例をそれぞれ語った。
最終のプレゼンとなった観山聴月は、顧客、社員、取引先・地域社会の全てを良くする「三方良し」の精神を徹底するとともに、東日本大震災からの宿の復興、温泉の無料開放など被災者への支援策を紹介した。
観山聴月には青年部の横山部長と審査員を務めた観光庁の井手憲文長官(代理=加藤隆司審議官)から表彰状が贈られた。原華織総支配人は「夢を見ているようだが、今が本当のスタート。このような機会を設けてくれた全旅連青年部に感謝したい」と述べた。
審査委員長を務めた全旅連の佐藤会長は「全ての旅館が素晴らしかった。5軒の旅館はパフォーマンスの違いはあるが、お客さまに喜んでもらいたいと思うところ、スタッフ全員が一つの目標に突き進んでいるところに共通点があった。きょうおいでになった皆さまの経営に役立つことがたくさんあったと思う」とコメント。
青年部の横山部長は「旅館は若者が働きたい仕事のランキングの下位にいる。数もピークから半減している。しかし5軒のプレゼンを見て、旅館業が魅力ある業界だと皆が気付いたはずだ。これからわれわれ責任世代が若者に誇れる旅館業界にしたい」と述べた。
グランプリ決定の瞬間(右から2番目が観山聴月の原総支配人、左端は横山部長)