帝国データバンクによると、今年1〜5月のホテル・旅館の倒産は68件で、過去最多となった2008年を上回るペースで進んでいる。特に東日本大震災後は著しい増加傾向にあり、4、5月と2カ月連続で単月件数の過去最高(2000年以降)を更新した。震災の直接被害に加え、相次いだ予約キャンセルや自粛ムードが経営を圧迫。福島第一原発の事故を受けて訪日外国人も激減している。同社では「この先も高い水準で倒産件数が推移する恐れがある」としている。
倒産を主因別にみると、販売不振や業界不振などの「不況型」が56件で、全体の82.3%を占める。長引く景気低迷で客足が伸びず、過去の設備投資が負担となっていたところに震災が追い打ちをかけて倒産に至ったケースが多いという。
震災後は、震災の直接被害よりも相次ぐキャンセルや自粛ムードのあおりなど間接的被災で事業が立ち行かなくなるケースが続出している。
態様別では、破産が49件、構成比72.1%でトップ。特別清算の18件を合わせた清算型の倒産が全体の98.5%を占めた。事業を継続する再建型は減少傾向にあり、今年は民事再生法が1件あるのみ。厳しい経済状況の中で今後の業績回復が見込めず、清算型を選ばざるを得ない事情があるとみられている。
業歴別では、30年以上が41件で、構成比60.3%。老舗企業の倒産が高水準で推移している。業歴100年以上の倒産も6件発生した。
規模別では、資本金1千万円〜5千万円未満が36件、構成比52.9%とトップ。次に1千万円未満の18件が続き、中小規模のホテル・旅館が多くを占めた。
負債額別では、1億円〜5億円未満が29件、構成比42.6%で最も多い。
地域別では、中部が19件、構成比27.9%でトップ。以下、関東(11件)、中国(9件)、九州(8件)、東北(7件)、近畿(7件)の順。都道府県別では長野が9件で最多。スキー場や温泉地の観光客が減少し、事業の継続が難しくなっている状況という。被災地では、福島で4件発生しているが、岩手、宮城、茨城はゼロとなっている。
【震災関連の主な倒産】
▽伴久ホテル(栃木県日光市、破産、負債29億5500万円)震災の影響で営業自粛を余儀なくされ、以後の回復も見込めないことから事業継続を断念。
▽観山荘(福島県福島市、破産、負債14億円)震災により建物に大きな損傷が生じたため休業していたが、一時再開を目指すも改修費用調達のメドが立たず、事業継続を断念。
▽みよしや旅館(兵庫県美方郡、破産、負債13億円)2011年に入ってからは豪雪に加え、震災の影響でキャンセルが相次ぎ、事業継続の見通し立たず。
▽長谷屋(山形県上山市、破産、負債1億2900万円)地震の影響で営業を休止。3月15日に再開したが宿泊客のキャンセルが相次ぎ、資金繰りが悪化。
▽エースリーコーポレーション(大分県別府市、破産、負債7800万円)震災の影響で予約のキャンセルが相次ぎ、業況悪化に追い打ち。
▽オフィスケーエム(長野県飯山市、破産、負債3千万円)震災後、予約のキャンセルが相次いだため収入が落ち込み、事業継続を断念。