帝国データバンクはこのほど、全国企業対象の景気動向調査の8月分を公表した。同月の景気DI(0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.6ポイント増の29.7だった。「国内景気は緩やかに持ち直しの動きが見られたが、わずかな回復にとどまった」と同社。このうち旅館・ホテルは同0.9ポイント増の6.0と、4カ月連続で上昇も、6カ月連続の1桁台にとどまった。
DIを10の業界別に見ると、7業界が上昇するも、いずれも低水準だった。
このうちサービスは0.6ポイント増の31.8と、4カ月連続で上昇。サービスの15業種では、旅館・ホテルほか、娯楽サービス、メンテナンス・警備・検査、人材派遣・紹介など11業種が上昇。飲食店、広告関連など4業種が低下した。
運輸・倉庫は1.2ポイント増の25.4と、2カ月連続で上昇。ただ、10業界中で最も低い数値となっている。「各種観光振興策が実施される中、厳しい状況が続いている宿泊業と同様に、国内旅行や旅行代理店、バス・タクシーなどの旅客自動車運送といった観光関連の企業では持ち直しの動きに弱さが見られる」(同社)。
小売は0.7ポイント減の30.3と、3カ月ぶりに低下した。特別定額給付金の支給で6、7月に持ち直した「家具類小売」などの業種で景況感が再び悪化した。猛暑や新型コロナウイルスの感染再拡大で外出を自粛する動きが「各種商品小売」などの業種へ悪影響を及ぼした。
10の地域別では、九州のみが悪化した。
このうち北海道は1.1ポイント増の33.4と、10地域で最も高い水準となった。公共工事の発注が堅調な道東地域の景況感が大きく上向き、全体を押し上げた。
南関東は0.7ポイント増の30.4。5カ月ぶりに30台に復帰した。自宅内消費の高まりで、宅配貨物を含む「運輸・倉庫」などの業種がプラスに寄与した。
九州は0.7ポイント減の31.8と、3カ月ぶりに悪化。新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、福岡、沖縄で独自の緊急事態宣言などが出され、小売業や娯楽サービスなど、個人消費関連が大きく悪化した。
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企業の景況感に関する主な声は次の通り。
「旅行、飲食業などの取扱高の回復が遅れている。新型コロナウイルスの影響でキャッシングの需要も低迷している」(現在、悪い、クレジットカード)。
「主要産業である観光産業を中心に回復にまでは至っていない」(現在、悪い、信用共同組合)。
「インバウンドを含めた観光業の影響の大きいエリアであり、Go Toトラベルも感染再拡大で不発。例年繁忙期である7月後半以降悪化している」(現在、悪い、貸事務所)。
「Go Toトラベルは新型コロナウイルスの感染が拡大している中、人の動きが今一つ良くない。効果は、現時点では限定的」(現在、悪い、旅行代理店)。
「新型コロナウイルスの感染が収束せず、一度入った仕事もキャンセル。学校行事も取りやめとなり、Go Toトラベルも利用者が少ない」(現在、悪い、一般貸切旅客自動車運送)。
「会食、宴会、結婚式の中止、延期が続く。Go Toトラベルに合わせ活気が出るかに見えたが、東京除外で厳しい状況が続く。都民向け宿泊プランでステイケーションの需要喚起をしているが、いまだ伸びは鈍化している」(現在、悪い、旅館)。
「新型コロナウイルスの影響で、空調・換気に対する重要性の認識が高まり、古い設備の更新需要が出てきている」(現在、良い、冷暖房設備工事)。
「免疫効果への期待が高く、乳製品飲料の売り上げが好調」(現在、良い、食料・飲料卸売)。
「飲食店、ホテルなどの消費が落ち込み、それらの設備投資はほとんど見られなくなった。住宅投資も先行き不安から弱い状態が続くとみられる」(先行き、悪い、木材・竹材卸売)。
「お盆休みに帰省する方が少なく消費に影響が出た。年末も同じような傾向が予想される」(先行き、悪い、がん具・娯楽用品小売)。
「新型コロナウイルスの終息が見えず、オンライン会議が進む中、出張(渡航)が減ると予想する」(先行き、悪い、旅行代理店)。
「観光産業、インバウンド需要が激減し、経済への影響は計り知れない。持ちこたえることができない会社の倒産が増えるのではと懸念している」(先行き、悪い、ごみ収集運搬)。
「収束後も生活様式の変更などで先が見通せない」(先行き、悪い、スポーツ・娯楽用品賃貸)。
「来年に入ればワクチンの開発等で景気が上向くと考える」(先行き、良い、自動車<新車>小売)。