「DI」低水準も最大の上昇 「各種支援で予約堅調に推移」
旅館・ホテルの業況改善がさまざまな調査から鮮明になっている。帝国データバンクが5日に発表した景気動向調査の10月分によると、同月の景気DIは前月比14.8ポイント増と、過去最大の上昇幅を記録。日本政策金融公庫(日本公庫)が6日に発表した生活衛生関係営業の景気動向等調査の7~9月期分では、同期の業況判断DIが前期を36.5ポイント上回った。調査に回答した旅館・ホテルからは、Go Toトラベル事業や地元行政の支援策で予約が堅調に推移したなどの声が上がっている。
帝国データバンクの景気動向調査は、全国の企業2万3695社を対象に、現在の景況感を尋ねたもの。「非常に良い」「やや良い」「どちらともいえない」「悪い」など7段階で判断してもらい、回答を数値化してDIを算出。100点満点で50が「良い」と「悪い」の分かれ目としている。
同月の旅館・ホテルの景気DIは27.2で、前月(12.4)を14.8ポイント上回った。依然として低水準だが、2002年5月の調査開始以降、最大の上昇幅となった。
新型コロナウイルスが感染拡大した今年3月に7.0と、初の1桁台を記録。以降、1.5、2.9、4.8、5.1、6.0と8月まで1桁台が続いたが、9月に12.4と7カ月ぶりに2桁台に回復。10月はさらに上昇した。
一方、日本公庫の調査では、旅館・ホテルの業況判断DI(前期比で好転の企業割合から悪化の企業割合を引いた値)がマイナス59.8と、前期(4~6月期、マイナス96.3)を36.5ポイント上回った。来期(10~12月期)はマイナス46.4と、低水準ながらさらに上昇の見通しだ。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった1~3月期にマイナス52.2と、前期(昨年10~12月期、マイナス28.6)から23.6ポイントの大幅減。4~6月はさらに低下したが、Go Toトラベルキャンペーンが始まった7~9月期は上昇に転じた。
総務省が10月30日に公表したサービス産業動向調査の8月分速報では、同月の宿泊業(旅館・ホテル、簡易宿所、下宿業)の売上高が前年同月比46.9%減。低水準が続くが、今年3月以来、5カ月ぶりに50%を下回る減少幅となった。5月の81.0%減を底に3カ月連続で減少幅が縮小している。
日本公庫の調査に回答した旅館・ホテルは、「市の宿泊割引キャンペーンや国のGo Toトラベル事業による支援策などの効果で予約が堅調に推移した」(新潟県)、「Go Toトラベルに東京発着が追加され、『地域共通クーポン』事業も加わり、首都圏からの週末宿泊の予約が入り始めた」(香川県)と、国や地方自治体からの支援策の効果を強調している。
半面、「コロナ禍の長期化で、阿波踊りや各種スポーツ大会の試合・合宿等が中止となり、宿泊客が減り稼働率が低下している。Go Toトラベルの効果に期待しているが、出張者の減少などもあり、宿泊客の減少に歯止めがかからない」(徳島県)と、厳しい状況を述べる旅館・ホテルも見られた。
帝国データバンクの調査では、「Go Toトラベルキャンペーンの恩恵が多い旅館と少ない旅館がある」と、格差を指摘する同業者の声があった。
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