新春トップインタビュー 帝国ホテル社長 定保英弥氏

  • 2022年1月11日

定保社長

決め手はホスピタリティの差 DXの取り組みも大変重要

 ――21年はどんな年だったか。コロナ禍への対応、東京五輪対応などについて伺いたい。

 21世紀に入ってから、米国での同時多発テロ(01年)、SARS禍(02年)リーマンショック(08年)、東日本大震災(11年)など大きな経済危機や大災害などが今までにもあった。都心のホテルは、それらの影響を受けやすく、そのたびに半年から1年程度は経営的に厳しい状況に置かれた。ただ、これだけの長期間にわたって世界経済が感染症の影響を受け、回復の見通しが立たないというのは過去になかった経験だ。

 21年度の上半期は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の影響下で、帝国ホテル東京単体(上高地帝国ホテル、帝国ホテル大阪を除く)の業績が前年同期比55%減だった。20年度上半期は同70%減だったので、改善はしたものの依然厳しい状況が続いている。客室稼働率で見ると上半期は20%強。10月に緊急事態宣言が解除され、ようやくお客さまの動きが出てきたものの、11月でも30%程度。料飲も入れた売り上げべースで平常時の半分程度だろう。

 経費削減にも鋭意取り組んできたが、特に平日の稼働がまだ伸びず、苦戦している。

 東京五輪の開催は20年から21年に延期されたわけだが、これについては日本ホテル協会の一員として、東京五輪組織委員会とさまざまな折衝をした。取消料の扱いなどについても要望はかなり受け入れていただけた。

 ビジネス的には、当初想定していた規模の半分以下になってしまったが、私たちがお迎えする範囲内で、精一杯のご対応はさせていただけたと思う。

 ――コロナ禍中に従業員対策で苦心されたことは。

 20年4月第1回緊急事態宣言が発出され、お客さまがほとんどお見えにならなくなった。客室稼働率も10%未満になり、社員2600人の80%以上が雇用調整助成金をいただきながら休業状態に入った。

 社員が不安がっていると思い、同5月中旬ごろ、本来は地震発生時などに使う社内の安否確認メールの仕組みを使って全社員に社長メッセージを送った。「元気ですか。皆さんの雇用は守ります。感染症対策、販促や経費節減などで良いアイデアがあれば寄せてください」と呼びかけた。社員の半数以上から返信があり、計5473件のアイデア、提案があった。これらの提案がヒントとなり「オーダーバイキング」や「帝国ホテル サービスアパートメント」「キッチンカーによるテイクアウトランチ販売」などの新ビジネスが生まれた。

 ――コロナ禍を経て総合シティホテルは今後どのように変化していくと思うか。宿泊産業もDX化は避けられない。非接触・IT化の推進とヒューマンホスピタリティサービスの維持、提供は相反しかねない課題だ。

 お客さまの利便性と安全性の向上、管理部門の業務の効率化、合理化を考えるとDXへの取り組みは大変重要だ。ただ、総合シティホテルの存在意義、非日常の空間でホテルライフを楽しみたいというニーズが失われることはないと考えている。DXとヒューマンサービスのバランスが鍵だ。最後の決め手はソフト面、ヒューマンホスピタリティがどれだけ抜きんでているかになるだろう。

 ――帝国ホテルは、他のシティホテルが業務効率追求の観点から外注化比率を上げる中、内製化率が高い。

 ランドリーサービスなど確かに内製化にこだわってきた部分はある。ただ、時代は変化した。ホテルシステム(コンピューター)を例にあげると、自社開発のシステムを1983年から運用してきたのだが、OTAとのデータ連携などで追いつかない部分も出てきたため、タップ社のシステムに全面刷新した。DXは専門のパートナー企業に委託した方が良い分野だと思う。

 ――今後のオンラインでの客室販売戦略。ロイヤリティプログラムは。

 独立系のホテルであり、チェーン展開しているわけではないので、世界につながる販路としてOTAのネットワークは最大限に活用させていただく。

 ロイヤリティプログラムとしては、1973年発足の会員組織「インペリアルクラブ」を運営している。帝国ホテルで挙式を挙げた方も含め、ロイヤルカスタマー約12万人が会員となっている。

 ――帝国ホテル東京の建て替え計画について伺いたい。

 21年10月末に新本館のデザインアーキテクトをパリ在住の若手建築家、田根剛氏に決定したことを発表した。国際的に活躍する国内外の建築家10数名でコンペティションを実施。帝国ホテルの歴史、理念を最もよく理解し、次世代の日本のホテル文化をリードする「新しいグランドホテル・迎賓館」にふさわしいデザイン、提案をしてくれた田根氏に委ねることにした。本館建て替えの実施時期は31~36年度だ。

 帝国ホテルは1890年、日本の近代化を推進する明治政府の国策により、海外賓客を遇する迎賓館として、初代会長である渋沢栄一の「社会の要請に応え、貢献する」という信念とともに開業した。初代本館の洋風建築は隣接する鹿鳴館とともに西欧化を目指す日本のシンボルとなった。1923年に開業した2代目の本館は、近代建築の雄、フランク・ロイド・ライトの設計で「ライト館」と呼ばれ、帝国ホテルの名前を世界に知らしめるきっかけとなった。ライトの意匠は、新本館のどこかに継承していくつもりだ。

 近代的なガラス張りのビルの中に入居するホテルが増える中、近景、遠景、どこから見ても「ザ・ホテル」の風格を持つ建築物になる。

 ――帝国ホテル京都も26年春に開業する。

 京都への出店は歴代経営陣の悲願でもあったのだが、大変良いご縁をいただき、最高の立地への進出が決まった。帝国ホテルブランドのホテルとしては、東京、上高地、大阪に次ぐ4軒目。1996年の帝国ホテル大阪の開業以来、30年ぶりの新規開業となる。祇園甲部歌舞練場敷地内の弥栄会館の一部を保存活用し、約60室のホテルを新築する。弥栄会館は、その重層的な屋根や塔屋の形姿が特徴的で、市民や観光客にランドマークとして親しまれてきた。この貴重なレガシーを継承し、祇園南側地区の歴史ある町並みにふさわしいホテルにする。地域の方々に愛されながら、国際文化観光都市・京都から日本文化を世界に発信する拠点の一つにもしていきたい。

(インタビュー実施日は21年11月16日)

定保社長

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