新型肺炎、各地でさまざまな影響 風評被害も懸念


 観光経済新聞社はこのほど、全国の主な観光地と旅館・ホテルに春節の訪日外客の入り込みと新型コロナウイルスによる肺炎拡大の影響を聞いた。中国からの観光客がもともと多い地域は客足の減少やキャンセルが目立ち、少ない地域は前年同様など状況はさまざま。ただ、影響がないとする地域や旅館も「日本人のキャンセルが出始め、この先が心配」と風評被害を懸念する声が出ている。

 中国・武漢市から北海道を訪れた中国人女性が新型コロナウイルスに感染し、肺炎を発症したことが1月28日、確認された。道内での患者の確認は初めてで、札幌市ではこれを受け、30日に感染症対策本部会議を立ち上げた。

 秋元克広市長は、(1)感染症のまん延を防止するため、一層の対策を実施する(2)市民や観光客、事業者に対して、正確な情報を分かりやすく提供して不安の解消を図ると共に、所管施設などに情報提供を行い、連携をとる(3)観光や経済への影響も懸念されるため、当面の状況を把握した上で、さらなる対応を検討する―ことを指示した。

 1月23日から「氷瀑まつり」(3月15日まで)が始まった北海道上川町の層雲峡温泉。海外からの旅行者、特に台湾やタイ、マレーシアなどの姿が目立つ。

 層雲峡には年間21万人ほどの外国人客が訪れるが、約半分が台湾人だ。もともと、中国人観光客はそれほど多くはないが、新型肺炎の影響が出つつある。層雲峡観光協会によると、「1~2月末におよそ1900人の中国人観光客の宿泊予約が入っているが、ここにきてキャンセルが発生している」と中島慎一事務局長。

 新型コロナウイルス対策として、今回初めてまつり会場に消毒液を置いたが、来場者任せだけに不安は隠せない。

 中国政府が1月27日以降に同国からの海外団体旅行を禁じたことを受け、「宿泊予約のキャンセル連絡が本格化してきた」というのは札幌市の定山渓観光協会。件数は取りまとめ中だが、「感覚的には例年よりも確実に多い」と顔を曇らせる。

 ホテル観洋(宮城県南三陸町)の女将、阿部憲子さんは「台湾の方はともかく、中国の方はほとんど(この地域に)来ないので、幸か不幸か、春節や新型肺炎の影響はありません」と苦笑い。それよりも台風19号の影響で、キャンセルが出たのが痛かったという。新型肺炎でキャンセルが出ている地域とは温度差があると認める。

 仙台の奥座敷、秋保温泉。旅館組合も同様だ。「中国人客の分母がそもそも小さいので、新型肺炎の影響もそれほど大きくはない」と胸をなでおろす。

 群馬県の草津温泉旅館協同組合は今年の春節について、「具体的な(入り込みの)数字はまだつかんでいない。目立った動きもない」とし、新型肺炎の影響は「中国からのインバウンド客は比較的少なく、大手の旅館からも、目立ったキャンセルはないと聞いている」。

 栃木県の鬼怒川温泉旅館組合は「県の依頼で(入り込み状況を)調べているところ」。

 長野県の野沢温泉旅館ホテル事業協同組合は、「(春節の)数字については集計中だが、昨年と大きく変わらないようだ。キャンセルも多少はあるようだが、ほとんどない。今年は雪不足で、今年については既に航空券を手配していた関係などから特に影響はないが、その影響が来年に出ないか心配している」。

 金沢市旅館ホテル組合は、関係省庁からの感染拡大防止策の情報などを加盟施設に周知している。金沢市の18年の外国人宿泊客数は52万2千人、うち中国は5万1千人で約1割。「SARSの時とはインバウンドの数が違うので、多言語での情報提供が重要だ」。

 岐阜県高山市の飛騨高山旅館ホテル協同組合は、中国人客とみられる宿泊キャンセルは増えているようだが、情報は順次集計中。18年の統計で高山市の外国人宿泊客数55万2千人のうち中国4万9千人で約1割。「高山陣屋周辺も欧米やアジアの観光客でにぎわっており、普段の光景と目立った変化は見られない」。

 三重県鳥羽市の鳥羽市観光協会は、感染拡大の防止に関して会員施設に関係機関からの情報を周知している。今のところ観光客から協会への問い合わせが増えているといった状況はないが、「国内客を含めて風評被害などが起こらないよう願っている」。

 国内で日本人初の感染が確認された奈良県。同県インバウンド・宿泊戦略室によると、「昨年1年間に258万人の外国人が訪れている。そのうち中国の方が45%。団体旅行の中止を懸念している。奈良市に聞いたところ、大規模ホテルでかなりお客さまが減っているようだ」。

 神戸市の有馬温泉観光協会は、「例年通りお客さまが来ており、逆に増えたという声も聞いている。温泉街で海外の人も参加できる節分祭などイベントを豊富に行い、参加する人も増えた。訪日客はお客さま全体の3割。中国の人はその中で2割程度。しかし、今後は読めない」。

 鳥取県の皆生温泉旅館組合は、「台湾と香港は例年並みから、少し少ないぐらい。中国からは、春節に伴う山陰を巡るツアーが、団体旅行の規制が掛かる前に30~50人来たと聞いている」。

 春節期間に「長崎ランタンフェスティバル」(1月24日~2月8日)が開かれている長崎市。同市観光推進課にフェスティバルの入り込み状況を聞くと、「1週目は天気が悪く、全体的に出足は鈍かった。2週目の週末(2月1、2日)は晴れたが客足は落ちている。コロナウイルスの影響が出ていると思われる。まだ結果は出ていないが、目標の100万人に届かないかもしれない」。

 宿泊キャンセルについては、「旅館からごっそりといった話はない」。中国人団体はクルーズ客が多く、日帰りで市内に出る人が多いという。
鹿児島県の指宿市観光協会は春節中の宿泊予約について、「当初、順調だったが、キャンセルが出て、(前年から)若干のマイナスだと聞いている」。

 新型肺炎の影響で、毎年同時期に行っていた「春節フェスティバル」を中止。JR九州が運行する特急「指宿のたまて箱」の関連イベントに変更した。

【取材班】

 
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