新型コロナに業界はどう対応 多田計介・全旅連会長に聞く


全旅連の多田会長

税のさらなる減免、特例の延長求める

収束のときを見据えて 今にしかできないことを

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光・宿泊業界がかつてない危機的状況にある。業界団体はどう対応し、事業者を守るのか。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の多田計介会長(石川県和倉温泉・ゆけむりの宿美湾荘社長)に聞いた。【聞き手=本社・森田淳】

 ――宿泊業界がかつてない危機的状況だ。

 多田 全国の皆さんから切実な声を聞いている。やむなく休業する旅館・ホテルや、地域全体の休業も増えている。「商売の火は消さない」と、営業を続けている旅館・ホテルもあるのだが、移動の自粛で環境は厳しい。私が経営する旅館も営業をしているのだが(編注・4月15日時点)、開闢(かいびゃく)以来の惨憺(さんたん)たる数字だ。

 ――全旅連の対応は。

 多田 1月に私を本部長とする「新型コロナウイルス対策本部」を設け、「金融対策」「助成金による支援」「税制・公共料金の免除、減免」「観光振興策」の四つのテーマについて、都道府県旅館ホテル組合の理事長と連携を取り、情報収集するとともに、国会議員や行政、金融機関などに陳情を行っている。

 特に3月の初めから半ばにかけて、東京の全旅連本部に詰めて、3団体(全旅連、日本旅館協会、全日本シティホテル連盟)でまとめた要望書を手に、政府与党、関係議員、関係省庁、関係機関などを飛び回った。

 陳情の成果も出て、政府の2度にわたる緊急対応策、そして先に発表された緊急経済対策でも、われわれの要望はいくつか受け入れられた。ただ、“真水”の部分がまだ少ない。

 無利子、無担保の融資が拡充されたが、融資はいずれ返済しなければならない。この先の大きな負担となる。返済のためにまた借金をするという負の連鎖になる。

 雇用調整助成金は助成率の拡大など特例措置を取ってもらったが、対応期間が3カ月プラス100日では収まらないかもしれない。日本流の手厚い雇用を守るため、収束するまでの期間延長を要望しなければならない。

 固定資産税の減免は大きい。ただ、1年のみの減免であり、その後にわれわれの体力がどれだけ残っているか。新コロナウイルス感染症が収束し、お客さまが瞬間的に増えても、完全復旧までには相当時間がかかるかもしれない。われわれが要望しているのは1年以上の減免。さらなる見直しを求める。

 他産業の固定資産税で、例えば製造業の工場が新たに作られたときのような恩典がわれわれの業界にはない。新たに施設を作っても、延々と税金を払い続けなければならない。不公平であり、その点も訴えていかねばならない。

 緊急事態宣言が出て、私自身の行動も制限されている。役員や事務方との打ち合わせも通信という空中戦しかできない日が多い。もどかしい日々が続くが、引き続き強力に対応していかねばならない。

 ――組合員旅館・ホテルに訴えたいことは。

 多田 問題なのは、いつ収束するかのタイミングが見えないことだ。

 現在の緊急事態宣言の期間が長期になった場合、感染の拡大防止と従業員の安全を考え、営業自体を自粛することも経営者の判断として求められる。

 しかし、収束しないということは絶対あり得ない。そのときを見据えて、個々の旅館・ホテルは今しかできないことに、さまざまな発想のもと、取り組むべきではないか。

 経営者は、心を奮い立たせ、頑張るという気持ちを持ち続けてほしい。どうしたらいいんだろうという慟哭(どうこく)、お先真っ暗という声も聞く。そういう言葉を言いたい気持ちも分かるが、ぐっとこらえて、前向きに声を発してほしい。

 日本には「上を向いて歩こう」という、世界を魅了した素晴らしい曲がある。泣きたい気持ちをぐっとこらえてとにかく上を向く、ということが、今必要な気がする。

 3月の観議連(自民党観光産業振興議員連盟)総会で細田博之会長に「旅館・ホテルを1軒もつぶしてはならない」と言葉をいただいた。われわれ業界の結束力が高まり、以前に増して業界の声が国に届くようになった。

 全旅連は若い発想を持つ青年部との連携を強固にし、要望活動をしている。今後も組合員の多くの声を聞き、組合員の役に立つように、タイミングを逸することなく活動する。

 一緒に乗り越えていきましょう。

 

全旅連の多田会長

 
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