新型インフルエンザの感染者が国内で初めて確認されたことを受け、海外への修学旅行だけでなく、国内の修学旅行にも延期、中止の動きが出ている。文部科学省の「新型インフルエンザ対策に関する行動計画」では、現在のような状況下に対しては、国内修学旅行に対する自粛要請などは定められていないが、安全確保を理由に修学旅行の中止を決めた学校もある。延期、中止が拡大すれば、旅行会社や観光地への影響は深刻。危機感を強める観光業界では、関係機関に冷静、的確な対応を求めるアピールを出す準備を進めている。
文科省は、海外への修学旅行や語学研修の延期、中止について全国の実態調査を進めているが、現在のところ、国内の修学旅行などの動向に関する調査の予定はないとしている。しかし、一部地域ではすでに延期、中止の動きが出ている。
徳島県の徳島市教育委員会は12日までに、県教委からの修学旅行の実施に関する通達を踏まえ、5〜6月に計画されていた31の全市立小学校の京阪神方面への修学旅行の中止を決めた。同時期に予定されていた中学校1校、市立高校1校の修学旅行も中止。「児童生徒の安全を最優先に考えた。行き先の問題ではない。他の時期に実施することを念頭に状況を見極めたい」(市教委)。
カナダでの語学研修から帰国した高校生らに感染が9日に確認されたが、水際での発見のため、政府が対策を強化する「国内発生」にはあたらない。文科省の行動計画でも、国内が感染拡大期に入るまでの段階には、国内の修学旅行に自粛を指導する明確な規定はない。
5〜6月は春の修学旅行シーズンにあたるだけに、旅行会社らの危機感は強い。「国内の修学旅行の延期や中止を過剰反応とは言い切れないが、適正な対応を呼びかける必要があるのではないか。何らかの対応をとらないと、観光業界は大打撃を受けることになる」と旅行会社の担当者は顔を曇らせる。
こうした動きを踏まえ、旅行業団体や宿泊団体など17団体で組織する観光関係団体会長連絡会議(議長=舩山龍二・日本ツーリズム産業団体連合会会長)は12日、修学旅行が適正に実施されるよう、関係機関に向けた緊急アピールをまとめた。
また、日本旅行業協会は12日、国内旅行、海外旅行など関係委員会の横断的な組織として、新型インフルエンザ問題に関する連絡会議の設置を決めた。関係機関と連携し、対策を講じていく。
一方、観光庁でも、国内修学旅行の延期、中止などの状況について情報収集に努めているほか、文科省との情報交換などを深める考えだ。