今年で開業から50年目となる老舗旅館のABBA RESORTS IZU―坐漁荘(静岡県伊東市、浮山温泉郷)は14日、来年本格的な実施を予定している料理教室「清坐奏楽(せいざそうらく)」の体験イベントを開催し、周辺地域の主婦ら約15人が参加した。
講師は、同館料理長の山本晋平シェフ、静岡県内で年間300品種を超える個性豊かな野菜を栽培するフードカルチャー・ルネサンス(静岡県三島市)の鈴木達也社長の両氏が務めた。
冒頭、鈴木氏は「われわれは『野菜だけでなく、季節を届ける』をコンセプトに事業を展開している。本物の旬の味覚を感じてもらいたい」と述べ、日本に古来伝わる「二十四節気七十二候」に沿って、旬の野菜の特徴を説明した。
その後、山本シェフが旬の野菜を使った料理の実演を実施。隼人瓜(はやとうり)のソース、菊芋のポタージュなどを参加者の前で実演調理し、実演後には参加者全員でコース料理を試食した。
参加者は「これまで施設を利用したことがなかったが、料理教室という形で利用できるのはありがたい。実演された料理も簡単で、普段の料理に生かせる」と満足した様子。また、参加者には通常日帰り入浴を実施していない同館の温泉を500円で利用できる特典も付けた。
5年前に、台湾の企業グループ「CIVIL GROUP」(葉信村総裁、本社・台中市)にオーナーが変わった坐漁荘。経営が変わった後、老舗旅館として日本の歴史や文化を利用客に感じてもらうことにさらに力を入れて取り組んでいる。宿泊者向けのオプションとして「日本茶体験」「日本刀鑑賞」「香り袋つくり」などのプログラムを用意。文化体験利用者の約6割はインバウンド旅行者とのことだが、「日本の方にこそ、日本の文化を体験してもらいたい」と同館。食事においては、料理に合わせて日本茶を楽しむことができる「ティーペアリング」を用意している。体験プログラムや食事の場面だけでなく、館内の香や、客室に置かれた従業員手作りの折り紙など、日本の旅館ならではのおもてなしを通して、随所で日本の文化に触れることができる。
地域への還元を目的に企画された今回の料理教室。宿泊者だけでなく、周辺住民の交流の場としての活用が期待される、注目の取り組みだ。
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