政府、観光地域づくりに「日本版DMO」育成へ


 政府は、観光の活性化を通じた「地方創生」を推進するため、専門性の高いマーケティングや戦略的な地域づくりの中核を担う観光組織「日本版DMO」を全国各地に育成する方針だ。政府の「まち・ひと・しごと創生本部」を中心に、交付金などを活用した具体的な支援措置を検討している。「日本版」と冠したように、欧米の先進的なDMOを参考にする。

 政府は、地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)の上乗せ分、来年度予算で創設が検討されている新型交付金などを活用した支援措置を検討。DMOの育成は、観光立国推進閣僚会議が決定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」にも記載されている。

 政府は6月30日、地方創生施策の指針となる「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を閣議決定。「日本版DMOを核とする観光地域づくり・ブランドづくりの推進」を盛り込んだ。

 基本方針への反映を念頭に、有識者を含めた検討チームがまとめた報告書は、地域観光の推進態勢の現状について、「DMOの機能を一部有するプラットフォームは全国に数カ所存在するのみ」で、多様な関係者をまとめ上げて事業を行う態勢が確立されていないと指摘。欧米の先進事例を踏まえ、関係者の合意形成を担い、戦略的に施策を推進する専門組織、日本版DMOを早急に育成するように求めていた。

 基本方針は、DMOの法人形態などを特定していないが、活動単位では地域の実状を踏まえて市町村、都道府県、広域エリアなど幅広く想定している。DMOに求められる機能、組織体制に関しては、充実度のレベル別にイメージを示した。

 数字が大きいほどハイレベルであることを意味する設定で、「レベル1」が(1)各種データの分析(2)KPI(業績成果指標)の設定、PDCAサイクルの導入(3)官民連携によるビジョンの策定。「レベル2」がレベル1の内容に加え、(1)本格的なマーケティング(2)観光産業を中心とするプラットフォームの形成。「レベル3」が、レベル1と2の内容に加え、(1)地域資源を活用する多様な主体のプラットフォームの形成(2)安定的な財源の確保による自律的経営(3)専門的人材の確保と育成—など。

 基本方針では目標として5年以内に、レベル1のDMOを全国に50カ所程度、レベル2のDMOを10〜30カ所、レベル3のDMOを5〜10カ所構築することを掲げた。総合的で、レベルに応じた段階的な支援措置を講じると定めた。

 総合的な支援に向けて関係省庁は、DMOの組織体制、事業、財源のあり方、支援策などについて調査、検討を進めている。観光庁では、海外の先進的な事例として、ドイツ、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなどのDMOの実態を調査している。国内の地方自治体や先進的な観光組織を対象とした調査も併せて行う。

 DMO=Destination Management/Marketing Organizationの略。観光地のブランドづくり、情報発信・プロモーション、マーケティング、戦略策定などを担う観光地域づくりの推進主体。

 PDCAサイクル=計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)を繰り返し、事業などを改善する手法

 
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