政府は7月14日、観光立国の実現に向けた施策を取りまとめた「観光ビジョン実現プログラム2020」を決定した。2030年の訪日外国人旅行者数6千万人などの目標を掲げた中長期構想「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づく単年度の行動計画。新型コロナウイルス感染症の流行で旅行需要が落ち込む中、Go Toトラベル事業による国内旅行の需要回復と新たな旅行スタイルの普及に注力する。宿泊施設については、生産性向上や投資の促進を通じた体質強化を推進する。
日本人の国内旅行については、「Go Toトラベル事業で観光需要を強力に喚起し、需要の平準化も進めつつ、国内観光の回復を図る」とした。休暇の分散化に加え、ワーケーション、ブレジャー、サテライトオフィスなどの働き方改革とも合致した、新しい旅行スタイルを普及させる方針を示した。
新しい旅行スタイルの普及については、20年度内に改定する観光立国推進基本計画などにも施策を反映させる。観光立国推進基本計画は、観光立国推進基本法で策定が義務付けられている中期計画で、現計画は20年度が最終年度となる。
新型コロナの影響を受けている観光関連産業については、「わが国が観光立国として生きていく上で重要な基盤であり、宿泊施設等の観光インフラが損なわれることのないよう、まずは雇用の維持と事業の継続の支援策を最優先に取り組む」と記述。具体策には、経済対策として実施されている実質無利子・無担保融資、雇用調整助成金の特例措置などを挙げた。
新型コロナからの「反転攻勢」では、宿泊施設などの体質強化を重視。「内外の観光客を呼び込む意欲のある中核的な宿泊施設を中心に、施設の改修や経営内容の見直しを促すとともに、多様な資金の確保のために必要な措置を講じるなど、反転攻勢に転じるための基盤の整備を行う」と明記した。
宿泊施設に関しては、政府系機関による投融資、各分野の専門家の派遣など多様な手段を活用し、感染症の拡大防止策▽新たなビジネス展開▽経営効率化▽外国人材の活用▽施設の改修―など、個々の状況に応じて高付加価値化、生産性向上への取り組みを促進する。所有と経営の分離を通じた投資の促進、意欲ある経営者に経営を委ねるための仕組みの構築などの施策についても検討、具体化する。
インバウンドの回復については、国・地域ごとの新型コロナの収束状況を見極めた上で、誘客が可能となった市場から、航空路線の再開に合わせて訪日プロモーションを展開する。「感染症終息後の中長期的スパンにおいて、インバウンドに大きな可能性があるのは今後も同様であり、2030年の(訪日外国人旅行者数)6千万人の目標は十分達成可能」と指摘した。