山梨県は8月29、30日の2日間、「やまなしインバウンド多様な食文化対応セミナー~食で世界を迎えるやまなしへ~」をリアルもオンラインも参加可能なハイブリットセミナーとして実施した。29日は韮崎市の中北地域県民センター、30日は富士河口湖町の富士山世界遺産センターで開催した。
ムスリムやベジタリアン、ヴィーガンなど多様な食文化、習慣を持つ外国人旅行者が安心で快適に滞在できる観光地を目指すことを目的に実施。県内の宿泊事業者、飲食店、観光施設、土産品製造事業者などが参加した。
メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長の高橋敏也氏が「インバウンドの多様な食文化の可能性」で講演した。
高橋氏は食の禁忌(タブー)について、(1)病気に起因する制限(カロリー、塩分糖分など)(2)アレルギー(3)宗教上の理由(4)倫理上、主義、ライフスタイルに基づくもの―の4種に分類できると指摘。食の禁忌を持つ人々は、世界の人口80億人のうち49億人おり、内訳はイスラム教徒20億人、プラントベース12億人、ヒンズー教徒11億人、アレルギー4億人、その他宗教2億人と解説した。
ムスリム(イスラム教徒)については、全世界から約150万人のムスリム訪日客が来日していると推計されると説明。ベジタリアンなどの訪日客についても約145~190万人いて、推計年間飲食費は約450~600億円にのぼると述べ、市場規模の大きさを示した。
高橋氏は「ムスリム訪日客とベジタリアン訪日客を合わせると約300万人。これはインバウンド客の約10%にあたる。一方、日本最大のムスリム向けレストラン検索サイト『ハラールグルメジャパン』の掲載店舗数は全国でムスリム対応761店舗、ハラール認証店舗160店舗で、対応しきれているとは言えない」と述べた。その上で「富裕層獲得にも、インバウンド対応にも、Z世代等の新しい市場開発にも、クチコミ等での高評価にも、単価アップにも、『食の多様性』への対応は有効な一歩となる」と強調した。
高橋氏は最後に、「ユニバーサルフード(ベジタリアン、ヴィーガン、ムスリム)対応飲食店と宿泊施設、土産店を結ぶ「面のネットワーク」を構築して、相互送客に取り組めば、訪日客の利便性を向上させることができる。県全体で訪日客の消費額向上を目指すことができる」と指南した。
メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長の高橋氏が講演