山梨県、宿泊施設DX強化事業で報告会 賃上げに直結


成果報告する「銘石の宿かげつ」の横森社長(=写真左)

 山梨県は13日、宿泊施設DX強化事業成果報告会を県庁で開いた。補助金採択事業者の宿泊施設が、DX導入によって実現した生産性向上の内容と賃上げ額を報告した。

 同事業は、県内宿泊施設に対して、先進的なデジタル技術を活用した観光DXの導入を促進することで、宿泊施設の業務効率化や生産性向上を図り、従業員の賃上げ実現を図ることを目的として実施。公募枠20社に対して、19社に伴走支援を行い、最終的に12社が補助金採択事業者となった。

 山梨県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長で常磐ホテル社長の笹本健次氏は報告会の冒頭あいさつで、「宿泊施設にとって、省力化して賃金を上げ、定着率を上げることは重要な経営課題。弊社の場合、10年前に採用した社員で残っているのは2名、現在28歳で主任だ。非常に頑張ってくれているので、コロナ明けで引き抜きに合うと困るとも思い、給与額を大幅にアップした。彼らの給与は額面で30万円超。残業代も合わせると35万円。会社にロイヤリティを感じてくれて、辞めないのではないかと思っている」と紹介。その上で、DXの導入による業務の効率化や、地域の旅館間での情報共有などにより、山梨県の宿泊業界全体の底上げを図っていくことが大事だという考えを示した。

 伴走支援者の一人、井門観光研究所の井門隆夫氏は総評で「宿泊業の労働生産性は、海外資本の株式参加が緩和された93年を境に、大企業と中小企業での乖離(かいり)が広がり、中小企業は緩やかに下落し続けてきた。抜本的な解決のためには、宿泊業を地域の社会資本として捉えたインパクト投資のような資本強化により解決していくことが大切で、こうした補助金も疑似資本の一種と考えられる。これまで宿泊業は従業員の非正規化で対応してきたが、その反動が繁忙期の人材不足につながっている。今後は対処療法だけでなく、産・官・金が連携した抜本的な資本構造改革を進めれば、地域の宿泊業は地方経済のハブとなり、地方創生の主役になれる」と指摘。「このような行政支援はぜひ継続し、地域経済のハブである中小宿泊業の生産性向上を支え続けていただきたい」と総括した。

 参加事業者による実績発表では、3社が登壇、1社がオンラインで報告した。

 レベニューマネジメントシステムを導入した「銘石の宿かげつ」の横森光平社長は、DX導入による賃上げ額を従業員40人に対して月額5千円と報告。清掃ロボットを導入した「丸久ホテル神の湯温泉」の橘田久佳社長は、同賃上げ額を従業員5人に対して時給換算で30円と発表した。また、遠隔操作可能なキーレスの鍵発行システムを導入した「農業体験民宿上石田のおうち」を運営する NPO法人南アルプスフィールドトリップの小野隆理事長は、同賃上げ額を従業員1人に対して時給換算で100円と話した。


成果報告する「銘石の宿かげつ」の横森社長(=写真左)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒