山形で「雪と文化の世界観光会議」


観光組織のトップらによるパネル討論

 国連世界観光機関(UNWTO)と観光庁、山形県などが主催する「雪と文化の世界観光会議」が2日、山形市内で開かれた。約30の国・地域から約300人が参加。観光資源としての雪を活用した商品の持続可能性と多様化について意見が交わされた。会議は国内で5カ所目、東北で初開催となった。

 UNWTOのタレブ・リファイ前事務局長が基調講演。リファイ氏は「観光は社会的にも経済的にもこの国の重要な柱となってきている。会議を通して観光がすべての人々のため、社会のためであることを示す良い機会となることを期待する」と述べた。

 3部からなるセッション1部では、「スノーカルチャーツーリズム・その現状と可能性」について、スイスのトビアス・ルーテ・クール大学教授が家族連れでにぎわうイタリアのスノーリゾート地を紹介。小さな地方にこそ可能性があると強調した。2部では、アジア・日本におけるスノーデスティネーションの展開について、佐藤信幸・日本の宿古窯会長が、山形新幹線を通した2次交通の現状と、東日本大震災時における旅館の受け入れ事例を説明した。3部では、新たな可能性の発見をテーマに、井口智裕・雪国観光圏代表理事が新潟県湯沢町の雪を活用したスキーに代わる新たなツーリズムの必要性を訴えた。セッションでは12人の発表者らが事例を紹介した。

 パネル討論では、リファイ氏を交え、日本の観光組織のトップらが、本保芳明・UNWTO駐日事務所代表の司会によりスノーツーリズムについて総括を行った。
 瓦林康人・観光庁審議官は「目指す方向性としてイノベーション(資源の活用法)、レジリエンス(回復力・復興)、サステナビリティー(持続可能性)の三つを挙げ、スノーツーリズムの多様化、多角化、ブランド化を図り、商品企画を推進すべき」と指摘した。

 松山良一・日本政府観光局理事長は「雪は非日常そのもので観光の大きなコンテンツ。素材としての雪は存在するが活用しきれていない。観光庁とも協力し、東北の復興を含めて力を入れていきたい」と話した。

 久保成人・日本観光振興協会理事長は「日本の文学は自然と共に育まれてきた。観光戦略の中ではあるが、雪をテーマに詠った文学の力も取り込んで行動することから新たな道が生まれる」と語った。

 田川博己・日本旅行業協会会長は「旅行業界の立場では、一過性では困る。持続可能な取り組みが求められ、さらにコンテンツにシナリオがないと商品化は難しい。雪国文化と旅館文化を融合していくことで多様化が進むのではないか」と言及した。

 清野智・東北観光推進機構会長は「東北のシナリオづくりに自治体、観光協会などと一緒に取り組んできたが、東北への入り込みは途上にある。新緑や紅葉狩りに集中し、冬はまだ少ない。4月や10月程度までに伸ばしていきたい」と目標を示した。
 吉村美栄子・山形県知事は「雪と共に生活し、雪を味方に観光振興に取り組んできた。今回の会議を契機に魅力ある地域づくりの推進、戦略的な誘客施策の展開、観光産業の振興による地域活性化、外国人の来訪促進と近隣県との連携の4本柱で観光立県を目指す」と強調した。

 
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