全国すべての小学生が農山漁村で長期宿泊体験活動を行えるよう支援する「子ども農山漁村交流プロジェクト」が農林水産、文部科学、総務の3省の連携で08年度から実施される。子どもたちの学ぶ力や自立心を育むとともに、過疎、高齢化が進む全国の農山漁村を活性化しようという試み。初年度のモデル事業を経て、5年後までに全国の公立小学校約2万3千校すべてで実施、年間約120万人(1学年の児童数)の参加を目指す。地域活性化、都市と農山漁村の交流人口拡大の起爆剤になるか注目される。
プロジェクトは、「児童の学ぶ意欲や自立心、思いやりの心、規範意識を育み、力強い子どもの成長を支える教育活動」の一環で実施。過疎化や高齢化が進む農山漁村の活性化も目指す。
宿泊体験活動は小学校高学年の児童が1週間程度、農家や民宿に泊まり、農業などの作業を手伝うもの。都会の児童が農山漁村に赴くほか、農山漁村の児童も農村から漁村など、違う環境に出向き体験活動を行う。
初年度の来年は各都道府県で10校ずつ、計470校をめどにモデル校を指定。約3万人の体験活動への参加を見込む。また、全国40カ所に1学年(100人規模)を受け入れ可能なモデル地域を設け、拠点施設を整備する。
推進する3省では、児童の参加費や、児童を受け入れる地方自治体の施設整備にかかわる費用の一部を補助する。来年度予算の概算要求ベースで、児童の食事を除く宿泊などの費用を1人当たり5〜6万円(総額22億円)補助するほか、受け入れ側には拠点となる研修施設の整備、廃校の改修、受け入れ計画の作成などについて総合的に支援する。一連のモデル事業を通して事業全体の課題点を抽出。ノウハウを蓄積して今後の事業展開に生かす。
体験活動を実施するか否かは各学校の判断に委ねられるが、プロジェクトでは、5年後までに全国すべての公立小学校の実施を目指す。また、活動の受け入れ拠点を全国500地域まで拡大したい構えだ。
農林水産省は「子どもの体験活動をきっかけに、次回は親子で体験に来てもらうなど、農山漁村地域へのリピーターづくりを進めたい。将来的に経済効果も期待できる、よりよい事業と受け止めている」と話している。
福島県のホテルなどで長く教育旅行誘致に携わり、国土交通省の「観光カリスマ」にも選ばれた小椋唯一氏は「これまで体験学習的要素を盛り込んだ修学旅行の実験的な実施が行われていたが、時間的制約がある中で交流というにはあまりにも時間が足りなく、必ずしも成功とは言えなかった。しかし、1週間という時間があれば、より濃密な交流や体験が可能になる」と、同事業を評価している。
ただ、「最も大きな問題点は、受け地側よりも学校側にあると考えられる。これまでにない大きなプロジェクトだから、想定外の混乱も反対も起きるだろうし、定着するまでにはかなりの助走期間が必要ではないかと思う」と指摘。「農山漁村側にとってはこのタイムラグこそ歓迎すべきで、その間にリサーチし、対策を講じ、環境整備と準備をしっかりとやった地域とそうでなかった地域とは、将来大きな差になるはず」としている。