対話と融和による活用を ポーラ伝統文化振興財団学芸員(博士・歴史民俗資料学)小泉優莉菜


ポーラ伝統文化振興財団学芸員(博士・歴史民俗資料学)小泉優莉菜氏 ▽写真・山田雅也(tateito―yokoito)

多彩な日本の文化資源

 2000年以降、日本では文化を観光資源として活用していこうとする動きがあり、国が主導し行っている。そして2020年の国会では、「文化を活用し文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」、いわゆる「文化観光推進法」が成立し、同年5月1日に施行された。

 「地域」と「地域の文化施設や企業」、そして「国」の協働により、文化・観光・経済の好循環化が期待されている。

 さまざまなステークホルダーが一体となり文化立国を目指している今日の状況において、地域の伝統文化の伝承者たちもその動きに呼応し、文化の発信を目指す動きも多くみられる。

 例えば、島根県に伝承される石見神楽のうちの一つ、「有福神楽」(浜田市下有福町)では、コロナ禍で伝承が危ぶまれる中、神楽の演目のあらすじを英訳し公開。さらにはネット技術を活用し、祭礼時の神楽奉納をオンラインで配信している。

 元々この地域は神楽が盛んであり、温泉街での毎週の公演や複合文化施設での神楽上演が行われていたが、先述した有福神楽の革新的な試みにより、国内外からの話題を呼び、見学希望者が増えているともいう。

 しかし、そのような活発な動きが見られる地域もある半面、地域によっては、行政との間に亀裂が入り、観光化自体を拒否する動きもみられる。

 例えば、2018年にユネスコ世界文化遺産として「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が登録されたが、かくれキリシタン信者として信仰を続けている住人や、関連遺産の地域のカトリック信者たちは、無論全員が世界遺産登録や観光化に賛成しているというわけではない。

 「自身らの信仰は先祖代々、苦しい時代でもつないできたものであり、人に見せるようなものではない(観光化するものではない)」という考えの方も多いのである。

 日本には数多くの多彩な文化資産が存在し、そのどれもが世界に誇ることのできるものである。しかし、そのような豊かな文化資産を次の世代につなげつつ、観光資源として広く世の中に発信していくためには、何よりもまずは伝承者たちとその持ち伝えてきた文化を尊重し、真摯(しんし)に対話をすることで、あつれきを生まずに融和させていくことが求められているのではないか。

 

 
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