富裕層向けサービス創出 観光庁、インバウンドで検討委員会


「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」の初会合(5日)

宿泊施設、観光コンテンツなど議論

 観光庁は、外国人富裕層の訪日旅行の促進に向けて、「世界レベル」「上質」な宿泊施設の誘致・整備、地域での「上質」な観光コンテンツの開発などについて検討する有識者会議を設置し、5日に初会合を開いた。インバウンドの再開、ポスト・コロナ時代を見据え、外国人富裕層の長期滞在と消費拡大につながる施策を議論し、2021年3月末までに今後の取り組みをまとめる。

 会議の正式名称は「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」。委員は学識経験者や観光事業者など13人。座長には、A.T.カーニー日本法人会長、CIC Japan会長の梅澤高明氏が就いた。関係省庁や日本政府観光局(JNTO)がオブザーバーなどで参加している。

 冒頭のあいさつで観光庁の金子知裕国際観光部長は「これまでわが国が誘致しきれていない富裕層など、上質な観光サービスを求め、これに相応の対価を支払う旅行者の訪日、滞在の促進を目指したい。求められている上質な観光体験、サービスとは何か、日本の強みをどう生かすか、どのような課題を解決すべきか、意見を聞かせてほしい」と述べた。

 委員会は冒頭部分を除いて非公開。初会合の議題は、富裕層旅行市場への取り組み、上質な宿泊施設の誘致で、委員による意見交換が行われた。

 座長以外の委員は次の通り(敬称略)。

 阿部佳(レ・クレドールインターナショナル名誉会員、明海大学教授)▽髙野雅臣(クリル・プリヴェFounder&CEO)▽近衞忠大(curioswitch代表取締役CEO)▽鈴木昭久(日本観光振興協会副理事長)▽田中辰明(不動産協会リゾート事業委員会委員長、東急不動産取締役常務執行役員ウェルネス事業ユニット長)▽田中雄司(マリオット・インターナショナルラグジュアリー部門日本統括副社長兼ザ・リッツ・カールトン東京総支配人)▽デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役社長)▽松嶋一重(日本政策投資銀行常務執行役員)▽矢ケ崎紀子(東京女子大学教授)▽山田理絵(Urban Cabin Instituteラグジュアリー・ブランディング・プロデューサー)▽涌井史郎(東京都市大学環境学部特別教授)▽渡部勝(パレスホテル専務取締役、パレスホテル東京総支配人)

「世界レベルの宿泊施設」整備へ

 外国人富裕層の訪日促進を通じた旅行消費の拡大は、政府の観光戦略実行推進会議で議論されてきたテーマだ。そこにしかない自然や文化を生かした高品質な体験コンテンツを提供できる地域に「世界レベルの宿泊施設」を誘致・整備することなどが有効な施策として示されていた。

 観光戦略実行推進会議の6月19日の会合では、有識者のデービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)が、コロナ禍からのインバウンド回復、訪日旅行消費の拡大に向けて、富裕層の誘客の重要性、日本の取り組みの遅れを指摘。「五つ星ホテル」の誘致、富裕層向け観光コンテンツの開発などを提言した。

 観光庁はこれらの提言を受け、同会議の7月27日の会合で、世界レベルの宿泊施設の誘致・整備、地域における観光コンテンツの造成などを支援し、官民が連携して上質な観光地の整備を推進する方向性を打ち出した。

 世界レベルの宿泊施設については、菅義偉首相が官房長官時代に出席した同会議の7月27日の会合で、「インバウンドが戻ってくるまでの間の準備として、世界的な顧客リストを有するホテルの誘致を進める」などの考えを示していた。それ以前にも、財政投融資の活用による世界レベルのホテルの整備促進に言及したことがある。

 訪日外国人旅行者数6千万人、訪日旅行消費額15兆円などの目標を見据え、富裕層のニーズに対応した「世界レベル」「上質」な宿泊施設の誘致・整備をはじめ、国立公園や文化財などを生かした観光コンテンツの造成、地方自治体を含む官民が連携した受け入れ環境整備などをいかに進めるか。地方創生、地域活性化につながる施策が求められており、委員会の議論が注目される。

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