宿泊税の導入に反対 宮城県の旅館・ホテル、県に再考促す

  • 2020年2月17日

会場で「宿泊税・絶対反対」などの横断幕を掲げる旅館・ホテル関係者ら(1月31日の説明会)

検証が不十分

 新税「宿泊税」の導入を目指す宮城県は1月31日、旅館・ホテル、観光事業者に向け「新たな観光振興財源」に関する説明会を仙台市のホテルメトロポリタン仙台で開いた。村井嘉浩知事を筆頭に商工労働部長、観光課長、税務課長が出席。事業者側から旅館・ホテル経営者らの関心の高さを示す230人超が出席した。県は1泊3千円以上1人300円、2万円以上500円の案と一律300円の2案を示し説明した。これに対し「税による宿泊施設つぶし」などと事業者らが反発を強め、時間は予定を1時間オーバーした。

 説明会の冒頭、村井知事は「有職者検討会議の答申から1カ月での議会への提出は、あまりにも拙速ではないかという意見に、事業者はもちろん宮城県民にお詫び申し上げる」と陳謝する異例のスタートとなった。

 質疑応答では、宿泊観光業界を代表し、宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長で日本旅館協会東北支部連合会宮城県支部長の佐藤勘三郎氏(秋保温泉・伝承千年の宿佐勘)が最初に質疑を行った。佐藤氏は「新税の使途が観光全般に及ぶなら、各業界から幅広く徴収すべきで、検証、精査は不十分で説明不足。税の専門家の検証があったとは思えないばかりか宿泊税ありきの議論になっている。宿泊業をどのように捉えているのかお聞きしたい」と導入への懸念を表明。その上で「震災後、沿岸部を含め、宿泊客の戻りは道半ばだ」と訴えた。

 各地区の代表者が宿泊税の導入に対する不明確な点を指摘、質疑を行った。

 石巻グランドホテルの後藤宗徳氏は「観光財源がないのではなく、予算配分に問題がある。安易に新税に走るべきではない。(宿泊業界は)価格競争が厳しく、税を課せば結果的に客が他県に流れてしまうことが予想される」と不安を述べた。

 遠刈田温泉の旅館源兵衛の佐藤久美子氏は「インバウンド全盛だが、当館では受け入れ実績がない。年金で暮らす高齢者は料金に敏感で、域内の老人会受け入れに支障を来すことは明白だ」と宿泊税導入への再考を促した。

 鳴子温泉の旅館弁天閣の菊地武信氏は「新税導入の前に地域住民と徹底的に議論することが基本。長期滞在者(湯治)も多く、負担が増し、営業努力だけでは収益確保は難しい。観光資源の魅力度アップの施策が先だ」とこれまでの観光行政のあり方に疑問を投げかけた。

 仙台市の丘のホテルの梅原敏氏は「教育旅行や合宿の宿泊客から徴収するのは本来の目的とは違う。2月議会定例会への提案は早過ぎる。宮城県の観光振興に何が必要で、何が不要か検討すべきだ」と新税の導入は拙速すぎると指摘した。

 南三陸ホテル観洋の阿部憲子氏は「税の創設は観光業のイメージダウンにつながる。自然災害や経済、政治問題に左右されやすい業界で、宿泊者減になってしまえば地域経済に影響が出る」と不安を述べた。

 応答した村井知事は「財政が厳しく、このまま人口減少が続けば観光に充てる財源は減少せざるを得ない。拙速すぎるとの意見が多く反省しなければならないが、あと約1年で観光復興交付金が終了する状況を鑑みると早急に進めざるを得なかったこともあり、宿泊事業者と接触するのが難しかった。選挙で審判を受ける者としてやりたくないのが本音だが、観光振興策による交流人口の拡大が急務。協力をお願いしたい」と宿泊税導入への決意を語った。

 当初、説明会の冒頭部分だけの取材を許可する方針だった。県の担当者が報道陣に退席を促したところ、事業者が強く反発。「県民の痛みを伴う重要な案件。なぜ報道陣を締め出すのか。説明会には報道陣を入れるべきだ」との緊急動議があり、急きょ報道陣を交えて開かれた。

 県が昨年12月6日から1月6日まで募集したパブリックコメントには1302件の意見が寄せられたが、その多くが反対意見だったことを知事は認めている。

 日本旅館協会東北支部連合会事務局長の若林秀敏氏は「京都などはオーバーツーリズムへの対応の一助として(宿泊税を)創設したが、宮城県は一般財源の確保が目的で、導入までのプロセスが全く違う」と語る。

 東日本大震災から来年3月で10年。宿泊税を徴収できるまでに宮城県の宿泊業界が復興したのか、観光振興を図る上で新税の創設は必要なのかの是々非々を含め、県の観光施策のかじ取りに注目が集まっている。

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