宿泊業、雇用・生産性・賃金アップ 観光白書、各種統計で動向分析


人手不足も需要増加に対応

 訪日外国人旅行者の増加など国を挙げた観光立国の推進を背景に、宿泊業では、就業者数が増え、生産性が向上、賃金が上昇している。政府が21日に公表した2019年版「観光白書」は、各種統計を基にその動向に着目した。深刻な人手不足で労働需給はひっ迫しているが、宿泊業は高齢者や女性などの雇用を拡大し、労働生産性を高めることで需要の増加に対応していると指摘。宿泊施設の新築、増改築などへの投資拡大についても地域経済に与える経済効果として注目した。

宿泊需要

 観光庁の宿泊旅行統計調査によると、18年の全国の宿泊施設の延べ宿泊者数は5億902万人泊で、12年に比べて15.8%増加した。このうち日本人の延べ宿泊者数には大幅な増減はないが、外国人延べ宿泊者数は12年比236.7%増の8859万人泊で、約3.4倍に増加している。宿泊施設の客室稼働率もおおむね上昇傾向にあり、18年の平均客室稼働率は12年比6.3ポイント増の61.1%に上昇した。

就業者

 宿泊業の就業者数は、総務省の労働力調査によると、12年の55万人から18年の63万人へと6年間で14.5%増加した。全産業平均の伸び率6.3%を大幅に上回っている。男女別、年齢別に見ていくと、宿泊業では、女性や高齢者を中心に雇用が拡大していることが分かる。

 また、総務省・経済産業省の「経済センサス―活動調査」のデータでも、宿泊業の常用雇用者数は、12年の54万6千人から16年の57万4千人へと4年間で5%増加した。都道府県別では、山梨県、三重県、福島県、東京都、長崎県の順で伸び率が高い。

新規求人

 宿泊業の新規求人数は、厚生労働省の職業安定業務統計によると、14年には16万4千人だったが、右肩上がりで増加しており、18年には19万5千人となり、4年間で18.9%増加した。他方で宿泊業の人手不足感は、他の産業よりも強く、労働需給がひっ迫している状況が各種調査からうかがえる。

賃金

 宿泊業の賃金は、人手不足や労働生産性の改善を背景に上昇している。厚労省の賃金構造基本統計によると、「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」の18年の合計額は355万9千円で、金額自体は全業種平均(497万2千円)を下回っているが、伸び率では12年から11.0%上昇した。

生産性

 生産性については、総務省・経産省の「経済センサス―活動調査」を基に、宿泊業の従業者1人当たり売上高を算出した。11年には826万円だったが、15年には940万円となり、4年間で13.8%増加したと指摘した。

 観光白書は「宿泊業が人手不足の状況の中、限られた人員の生産性を高めることで、需要の増加に対応していることを示唆している。このような労働生産性の上昇も、労働力の需給ひっ迫とともに、宿泊業における賃金の上昇をもたらす要因となっている」と分析している。

設備投資

 国土交通省の建築着工統計調査によると、宿泊業用建築物の工事予定額は、18年には1兆86億円に達した。12年には1121億円だったが、16年に6333億円、17年に9431億円に増え、18年は12年比で約9倍に増加した。工事予定額はすべての地方ブロックで12年に比べて増加している。

 宿泊業の設備投資の状況は、財務省の法人企業統計によると、12年の設備投資額を100とした場合、18年は184と大幅に増加している。

 
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