インバウンドの増加に伴って宿泊施設の新築、増改築の投資が増加している。政府が5日に公表した2018年版「観光白書」は、その動向に注目した。宿泊業用建築物の工事予定額は5年間で8.4倍に増え、17年には9431億円に達した。地方でも訪日外国人旅行者が増えている地域を中心に高い伸び率を示した。観光白書は、インバウンドが旅行消費以外にも、宿泊業の建築投資を創出するなど、地方経済、日本経済に貢献していると指摘した。
18年版観光白書では、訪日外国人の旅行消費額が17年に4兆4千億円に達したことを踏まえ、インバウンドの日本経済への貢献度などを検証した。日本製品の輸出、他業種の売上高や投資、社会の景況感の形成などへの影響に加えて、宿泊業の建築投資の動向を取り上げた。
旅館・ホテルなどの宿泊業用建築物の工事予定額(国土交通省「建築着工統計調査」)は、建築主が都道府県に提出した「建築工事届」(延べ床面積10平方メートル超)を集計した結果。宿泊施設の工事予定額は、12年には1121億円だったが、16年に急増して6333億円、17年には9431億円となり、1兆円に迫る規模に拡大した。
地方ブロック別の宿泊施設の工事予定額では、12年と比較した17年の伸び率が、北海道で約34.5倍、近畿で約17.7倍と2桁に達したほか、四国で約9.8倍、九州で約8.6倍、関東で約8.2倍などとなった。
地方部でも宿泊業の建築投資は増加している。例えば、外国人延べ宿泊者数の伸び率がこの5年間で約5~11倍に達した5県について、12年と17年の工事予定額を見ると、青森県は12年の5200万円から、17年には36億6300万に増加。岡山県は9900万から40億6千万円に、香川県は4800万円から46億4300万円に、佐賀県は実績なしから85億1900万円に、沖縄県は127億4600万円から785億3200万円にそれぞれ増加した。
この5県の投資動向について観光庁観光戦略課観光統計調査室の赤井久宣室長は「ここ数年で大きく伸びたインバウンドの傾向、地域の動向などを見て、一定のタイムラグを経た上で、16年、17年になって投資の意思決定につながったのではないか」と説明した。
観光白書は、建築投資全体に対する宿泊業の寄与度を分析した。建築物工事予定額全体の前年に対する増加額のうち宿泊施設の増加額が占める割合を寄与率とすると、12年は2.4%だが、17年には22.4%に上昇するなど、日本経済に一定の貢献を果たした。