宿泊施設も「全面禁煙へ」 厚労省通知


 受動喫煙による健康被害を防ぐため、厚生労働省は2月25日、旅館やホテル、飲食店など不特定多数の人が利用する施設を原則、全面禁煙とするよう求める通知を健康局長名で都道府県などに出した。禁煙・分煙の流れに歯止めはかけられないと見てか、客席を全面禁煙に踏み切る飲食店なども出てきている。宿泊施設の中には禁煙客室を設けているところもあるが、「全面禁煙はなかなか難しい」と戸惑いの声も少なくない。

 同省は08年に「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」を設置。昨年3月には、「基本的な方向として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべき」とする報告書をまとめた。今回の通知はこの報告書に沿った措置。

 対象施設は旅館・ホテル、飲食店のほか、鉄道駅、バスや航空旅客ターミナル、遊技場、美術・博物館など多岐にわたっている。屋外でも子どもが利用する公園などでは対策を促している。

 飲食店をはじめ、旅館・ホテルなどは喫煙者の利用も多いため、全面禁煙は容易ではない。新潟県のある大型施設の管理職は、「『リラックスしたいのにこの宿はたばこも吸えないのか』といわれると返答に窮する。喫煙者も大事なお客さま。(非喫煙者と)どう棲み分けしていくのか、今後の課題」という。

 「客室には灰皿を置いているが、ロビーには置いていません。お客さまの要望があればお出ししています。禁煙・分煙が当たり前という社会情勢なら、(我々サービス業も)対応しやすいが、現状では全面禁煙はできないし、まだ理解は得られないと思う」。長野県の小規模旅館の女将さんはこう指摘する。

 通知は全面禁煙が困難な場合、施設管理者に対し、「当面の間、喫煙可能区域を設定するなどの受動喫煙防止対策を求めることとし、将来的には全面禁煙を目指すことを求める」とした。また、喫煙可能区域を設けた時はその区域を明示し、未成年者や妊婦が入らないよう措置を求めた。

 ただ、通知に違反しても罰せられず、このため効果を疑問視する向きもある。

 4月1日から受動喫煙防止条例を施行する神奈川県。旅館・ホテルは公共的施設の第2種施設として位置づけられ、禁煙か分煙、どちらかを選択しなければならない(床面積700平方メートル以下の宿泊施設は「特例第2種施設」とし、条例による規制を努力義務としている)。県旅館生活衛生同業組合によると、現時点では分煙を選ぶ施設が多いようだ。

 日本マクドナルドは3月から、神奈川県内全店舗(約300店)での全面禁煙に踏み切る。こうした動きはジワリと広がりそうだ。「たばこの値上がりもあり、禁煙・分煙の流れは今後も強まりそう。全面禁煙を誘客手段にする手もあるのではないか」という旅館経営者もいる。

 
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