帝国データバンクによると、温泉旅館経営の合資会社大和館(岐阜県高山市)は5月28日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。負債は約1億9千万円と見られるが流動的。
同社は1953年設立、奥飛騨温泉郷に所在する温泉旅館「やまと館」を運営していた。客室は和室16室、宿泊定員62人で営業し、宿泊単価は閑散期の冬季平日で1人当たり1万2千円弱から、繁忙期には同2万円超の価格設定で稼働。飛騨牛を用いた料理も好評を博し、リピーターを含む顧客を集めていた。
近年はインターネット予約にも対応するほか、日本百名山にも数えられる笠ヶ岳(標高2898メートル)などへの山岳観光目的のインバウンド旅行客の宿泊が増加。宿泊客数ベースでは国内旅行客30%程度に対し、インバウンド客は70%程度に伸長していた。こうした営業施策により、一時は3700万円程度まで落ち込んでいた年収入高は、2019年4月期には約4300万円に回復した。
しかし、外国人宿泊客は素泊まりの利用が多く宿泊単価は低迷。利幅の確保ができず、2015年4月期以来、営業損益以下の各段階で100万円から150万円程度の欠損計上を続けた。
こうした中、今年2月ごろから新型コロナウイルスの感染が拡大し、国内外からの宿泊客は激減。ほぼ稼働できない状態に陥っていた。従前から金融機関からの借入金は年収入高の4倍を超える高水準に上り、元本返済の猶予を受けていたこともあり、後継者もなく、追加融資の導入は困難だったことから事業継続を断念した。