奈良県立博物館は12日、同博物館講堂で天平の食文化「大宮人の食卓『宴』」をテーマにした「まほろば講座」を開いた。約70人が参加。平城宮跡や長屋王邸宅地などの遺跡から出土した「木簡」などの資料から、天平時代の宮廷貴族のぜいたくな宴の食膳について学び、食文化について考えた。
講師は、当時の調味料や料理法を研究し、現代人の感性に合う宮廷料理「天平の宴」として再現した、奈良パークホテルの尾道龍男料理部長が務めた。天平時代の食文化を料理人としての立場から説明した。
尾道氏は、天皇家と豪族である長屋王、下級官吏が使う食器や食材の産地の違いを紹介。また、天平時代は、料理は遠方から運んでくるため、干物や発酵食品などの加工品が多いことなどを挙げ、「甘い料理はなく、古代の調味料としても、藻塩や酢、みそと醤油の中間にあたる醤(ひしお)が使われていた」と解説した。
奈良パークホテルでは約25年前から箸尾達哉会長を中心に、尾道氏が古代料理の再現に取り組んでおり、宮廷料理「天平の宴」を完成させた。当初は古代様式そのままに宿泊客や昼食客で販売していたが、現在はより食べやすい料理になっている。2010年の平城遷都1300年祭に向けて脚光を浴び、マスコミに取り上げられる機会が増えている。
講演する尾道料理部長