減温、減衰には補償必要
温泉と地熱開発に関する課題の解決などを探るセミナーが5月21日、東京都内で開かれ、有識者5人の講演が行われた。このうち日本温泉協会副会長の佐藤好億氏は、大規模な地熱発電開発が温泉の枯渇、減温、減衰などを招く可能性について警鐘を鳴らし、温泉事業者の不安払拭、温泉に悪影響が出た場合の補償などが不可欠と指摘した。関係機関からは、地熱開発に際して第三者の視点から地域に技術的な助言を行う活動などが紹介された。
セミナーの主催は、温泉の温暖化対策研究会(会長=奥村明雄日本環境衛生センター会長)。
日本温泉協会の佐藤氏は「温泉と共生した地域振興」と題して講演。「脱炭素化の国策のもと、大規模な大深度掘削による地熱開発計画が活発化しているが、温泉事業者は温泉への影響を非常に心配している。地熱開発そのものに反対しているわけではないが、温泉が守られるのか疑問に思われる開発事案もある」と述べた。
佐藤氏は事例として、因果関係は不明だが、地熱発電所の近くの温泉で減温が発生し、営業できなくなった山間部の温泉旅館のケースなどを紹介。因果関係の立証が難しい中、温泉に枯渇、減温、減衰が起きた場合、温泉事業者を救済する枠組みが必要と指摘した。日本温泉協会が関係機関との調整役、パイプ役の役割を果たし、問題の解決に貢献したいとの考えを示した。
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