自然公園法の改正案、国会提出
保護、利用の好循環で地域活性化
政府は、自然公園法の一部を改正する法律案を2日に閣議決定し、通常国会に提出した。国立公園などでの自然体験アクティビティの促進に向けて手続きの簡素化を盛り込むなど、保護に加えて利用面での施策を強化する。廃屋の撤去や利用拠点の機能充実など滞在環境の向上も推進。保護と利用の好循環で地域の活性化につなげるのが改正の狙いの一つだ。
改正案の概要を環境省の資料を基に紹介する。
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国、都道府県が保護管理を担う国立公園、国定公園において、地方自治体や関係事業者などの地域の主体的な取り組みを促す仕組みを新たに設け、保護のみならず、利用面の施策を強化し、「保護と利用の好循環」(自然を保護しつつ活用することで地域の資源としての価値を向上)を実現する。
■背景
地域の過疎化が進む一方、コロナ禍で自然や健康への関心が高まる中で、わが国を代表する優れた自然の風景地である国立公園、国定公園(以下「国立公園等」という)は、国内外の多くの人々を引きつける観光地などとして、地域社会にとって重要な資源となっている。
その自然の価値を生かし、地域活性化に資する滞在型の自然観光を推進するためには、魅力的な自然体験アクティビティの提供や旅館街などの上質な街並みづくり、認知度の向上が必要であるが、それが十分にできていない。
■主な改正内容
(1)地域主体の自然体験アクティビティ促進の法定化・手続きの簡素化
公園計画において、従来の利用施設のハード整備に加え、新たに自然体験アクティビティの促進を位置づけ、市町村やガイド事業者などから成る協議会を設け、自然体験活動促進計画(※)を作成。環境相、都道府県知事の認定を受けた場合には、計画に記載された事業の実施に必要な許可を不要とする。
これにより、計画に基づく魅力的な自然体験アクティビティの開発・提供、ルール化などの関係者が一体となった取り組みを促し、旅行者の多様なニーズに応え、長期滞在につながる国立公園などの楽しみ方を提供する。
※自然体験活動促進計画のイメージ=望ましい自然体験アクティビティの提供・開発促進、利用者の受け入れ体制整備、上質な自然体験の場の確保、適正利用のためのルールの策定など。
(2)地域主体の利用拠点整備の法定化・手続きの簡素化
公園利用の拠点となる旅館街などの街並みを整備するため、市町村や旅館事業者などから成る協議会を設け、利用拠点整備改善計画(※)を作成。環境相、都道府県知事の認定を受けた場合には、計画に記載された事業の実施に必要な許認可を不要などとする。
これにより、計画に基づく廃屋の撤去、機能充実、景観デザインの統一など、関係者が一体となった自然と調和した街並みづくりを促し、国立公園などにおける魅力的な滞在環境を整備する。
※利用拠点整備改善計画のイメージ=集団施設地区など利用拠点の面的な再生、上質化のため、廃屋の撤去やその場所への新たな投資、利用者目線の機能充実、景観デザインの統一、電線の地中化など。
(3)国立公園等の保全管理の充実
国立公園などの国内外へのプロモーションの促進、クマやサルなど野生動物の餌付け規制による人身被害などの予防、公園事業の譲渡による公園事業者の地位の承継に関する規定の整備、公園管理団体の業務の見直しによる指定の促進、特別地域などにおける行為規制の違反にかかる罰則の引き上げなどの措置を講じる。