国内旅行でコロナ克服へ 政府、「観光白書」で強調


混雑回避、時期分散化は課題

 政府が16日に決定した2020年度版「観光白書」は、新型コロナウイルス感染症の影響と、今後の観光振興の方向性に紙面を割いた。新型コロナの世界的な流行を受けて日本人、訪日外国人の旅行需要が大幅に減少する中、インバウンドの誘客が可能になるまでの間は、日本人の国内旅行が「観光需要の回復の鍵」「観光による再びの地方創生に向けた第一歩」と指摘した。新型コロナを経験した社会には、混雑や密集を避けた安全、安心な旅行環境づくりが求められるとして、旅行時期の分散化などを今後の課題に挙げた。

「再びの地方創生に一歩」

 国内外の旅行急減

 訪日外国人旅行者数は、19年には3188万人で7年連続で過去最高を更新したが、新型コロナの流行で世界的に旅行者の往来が縮小し、訪日旅行も大幅に減少した。訪日外国人旅行者数の前年同月比は2月が58.3%減、3月が93.0%減、4月が99.9%減だった。

 観光需要回復の鍵とされている日本人の国内旅行市場も、新型コロナに伴う外出自粛要請などで縮小した。「観光白書」では、20年3月までの統計を記述しているが、3月の国内旅行は消費額が前年同月比53.1%減、延べ宿泊者数が同41.8%減だった。4、5月はさらなる悪化が確実だ。

厳しい経営環境に

 観光産業の経営は、国内外からの旅行者の急速な減少で厳しい状況と指摘。国土交通省が実施したアンケート調査(4月30日時点)の結果によると、宿泊業(回答111件)の予約状況は、前年同月比で「70%以上減少」と回答した施設の割合は4月が86%、5月が95%に上った。

 経営、雇用の維持に向けた国の支援策の活用状況では、宿泊業へのアンケートの結果、資金繰り支援を「活用中」「活用に向けて検討中」と回答した施設が全体の81%を占めた。雇用調整助成金は「活用中」「活用に向けて検討中」が94%に達した。

回復は国内旅行から

 「観光白書」は、新型コロナの収束状況を踏まえながら、まずは日本人の国内旅行需要を着実に回復させる重要性を指摘。政府が今後実施する国内旅行費用の補助事業「Go Toトラベルキャンペーン」の効果を最大化する必要性に触れながら、国内旅行の近年の動向や活性化への課題について提言した。

 日本人の国内旅行市場を活性化させるには、旅行に出掛ける人を増やすというのが施策の一つの方向性だ。観光目的の国内宿泊旅行の経験率(1回以上実施した人数を人口で除した値)は、12年以降、55%前後の横ばいで推移していたが、直近では自然災害などの影響でやや低下し、19年は52.0%だった。

 旅行の阻害要因では、公益財団法人日本交通公社の「旅行年報2019」のデータを引用し、「仕事などで休暇がとれなかった」「家族、友人等と休日が重ならなかった」など休暇に関する理由が上位だったと指摘。休暇と観光需要の関係について「観光白書」は、「月別の旅行消費額を見ると、ゴールデンウイークのある5月とお盆休みなど長期休暇を取得する8月に偏りが見られ、旅行時期を柔軟に選択できていない」と課題に挙げた。

 半面、好材料に挙げたのが若い世代における観光目的の国内宿泊旅行の経験率の高さ。19年は、19歳以下64.2%▽20~39歳58.9%▽40~59歳51.7%▽60~79歳47.1%。最も高かった19歳以下は、経験率が14年以降6年連続で上昇している。「次代を担う若年層の旅行経験率の上昇は、人口減少が見込まれる中、日本人の国内旅行市場の活性化に明るい材料」と紹介した。

新しい旅行スタイル

 国内旅行の動向分析を踏まえ、日本人全体の旅行経験率を引き上げるには、(1)大人と子どもがまとまった休日を過ごす機会を創出する「キッズウィーク」などの休暇の分散化(2)出張のついでに出張先で旅行を楽しむブレジャー(3)休暇中に旅行先で仕事をするワーケーション―などの多様な休み方や働き方が可能になる環境づくりと、観光地域や観光事業者がそのニーズの変化に対応していくことが重要と指摘した。

 Go Toトラベルキャンペーンによる国内旅行の本格的な再開が期待されるが、新型コロナの終息までは、感染防止と社会経済活動の両立が課題。「観光白書」は「今回の経験から、安心・安全な旅行環境には混雑と密集の回避が一つの要素となったため、ゴールデンウイークや夏休みなどの長期休暇の分散化や、家族など少人数で滞在型の観光をする新しい旅行スタイルの定着に向け取り組んでいくことが重要」と提言した。

 
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