和歌山県すさみ町 町長 岩田 勉氏に聞く

  • 2022年4月19日

岩田勉 すさみ町長

企業の、あなたの、「ホストタウン」に

100人が1回来る町より、1人が100回来る町目指す

 観光庁が推し進める「第2のふるさとづくり」。物見遊山を目的とした旅ではなく、「人に会いに」「何度も訪れる」場所づくりを目指し、コンセプト作りや拠点整備などを後押ししている。そんな中、人口3800人ほどの和歌山県すさみ町が「第2のふるさとづくりプロジェクト」を立案して、取り組みを加速させている。目指すのは、企業や移住者、来訪者の「ホストタウン」。強いリーダーシップで取り組みを推進する岩田勉・すさみ町長に話を聞いた。(3月末、すさみ町役場で。聞き手は玄東實・本社社長室長)

 ――すさみ町の現況を伺いたい。

 岩田 人口は約3800人。関西圏では観光地として名高い白浜町の南隣に位置し、古くから漁師町として栄えてきた。「すさみケンケンカツオ」はじめ、イセエビなど豊富な海産物が取れる。海に山が迫っており、林業も古くからの産業だ。平地は少ないが、農業も盛ん。実は海外移民による日本のレタス栽培の発祥の地であり、レタス栽培も盛んに行われてきた。イノシシとブタを交雑させた「イノブタ」による町おこしを図った歴史もあり、イノブタ肉の商品化や架空の「イノブータン王国」としての情報発信などを行っている。そういった新しい取り組みへの積極性、イノベーションを受け入れる土地柄である。

 ――昨年、国のスーパーシティ特区構想に県と共に手を挙げた。

 岩田 すさみは高齢化が47%を超え、若い世代の都市部への流出などもあり、年間約100人の人口減少が進む「消滅可能性都市」だ。だが、これは当町だけの問題ではない。すさみの現状は、「10年先の日本の姿」であると捉えている。当町の課題は10年後の日本の課題であり、そういう意味でわが町は「課題先進地」。小さい町だからこそできる、最先端技術による課題解決を体感できる町づくりを目指して、30社を超える企業からの協力を得て、特区認定に向け町を挙げて取り組んできた。

 3月上旬に大阪市とつくば市が特区に決まり、当町は今回の特区指定からは外れた。大変残念ではあるが、特区指定を目指して、小さな町の職員が、大企業や県と話し合いを重ねたり、折衝したりしたことは、素晴らしい経験となった。また最先端の技術を持ったエンジニアなどが町にたくさん来たことで、町の若い人たちが大いに刺激を受け、自分から考えて動く主体性も増した。これからは町主導で、最先端技術を活用した町づくりを進めていく。

 例えば通信インフラは、今後、町の暮らしのあらゆるもののベースとなると考えている。山の中から海上まで、町内の全エリアで高速ネットワーク環境ができるようにしたいと考えており、最新規格のWi―Fiの整備なども検討している。

 ――観光庁が進める「第2のふるさとプロジェクト」モデル実証事業にも手を挙げた。

 岩田 「何度も地域に通う旅、帰る旅」という第2のふるさとプロジェクトの目指すところは、わが町が数年来取り組み、少しずつ形になってきているものであると考えており、強く共感している。

 ――具体的にはどのような取り組みを行っているのか。

 岩田 第一に取り組んでいるのは、「企業のホストタウンづくり」だ。町と防災協定を締結した企業や企業版ふるさと納税で寄付を行った企業に対して、企業研修の場やコンテンツの提供などを行っていく。土日であれば、公用車も貸し出したいと考えている。企業版ふるさと納税は、企業にとっても税制面、CSR活動面でもプラスになるもの。実際に当町に対して、1千万円を超える寄付をいただいており、その寄付金を原資に、間伐材を使ったアオリイカの産卵床づくりなども行った。

 海や山を活用した、すさみならではの企業研修プランはもちろん、コロナ禍で広がったリモートワークにも対応できる施設、サイクリングや釣り、田舎体験などのアクティビティも充実させてきた。アクセス面でも、南紀白浜空港も近く、高速道路もすさみまで伸びており、大阪から車で2時間、東京からは飛行機を利用すれば1時間30分で来ることができる。社員の学び、遊び、癒やしの拠点として、ホストタウンとして何度も足を運んでもらう環境は十分整っている。

 ――若い移住者も増えていると聞く。

 岩田 この6年で約100人が移住している。コロナ禍もあり、都会を離れた暮らしや自然豊かな場所での暮らしを求める若い世代、子育て世代が増えている。皆さん才能と意欲にあふれており、ゲストハウスや飲食店を開くなど、さまざま活躍している。昨年、元警察署だった施設をリノベーションして、コワーキングもできる観光案内拠点「FRONT110」を開設したが、このリノベーション計画にも、すさみを二拠点居住、移住の地として選んだ若い世代が中心となり関わっている。

 人口の少ない町だからこそ、町に来た「タレント」を持った人を最大限生かせるかどうかが非常に重要になる。すさみを訪れた若い世代の豊かな才能や発想力が生きる、生かせるフィールドが必要だ。そのためのインターネット環境や滞在場所の整備などを進めたい。また何度も来てくれる人を「すさみふるさと会員」として、住民票のない住民のような形で組織化し、手軽に移動したり暮らすように滞在したりできる仕組みを作りたい。目指すのは、「100人が1度だけ訪れる町」ではなく、「1人が100回訪れる町」だ。

 ――一般的に田舎は、いわゆる「よそ者」がコミュニティに入りにくい風潮があるといわれる。

 岩田 すさみは、カツオ漁などの時期は忙しいが、他の時期は県外に漁の手伝いに行ったり、貝ボタンづくりに海外に出稼ぎに行ったりすることで、「よその人」のおかげで生活が成り立ってきた歴史がある。皆、「よその人を大事にしなさい」と言われて育ってきており、田舎のわりには外部の人を受け入れる気質がある。実際にリモートワークなどですさみに来た人が、地元の人と関わりを持つ中で、すさみの人の良さ、温かさを実感してくれていることが、移住などにつながっているようだ。町民側も、ゲストハウスや地域デザインを手掛ける若い人たちとの交流が刺激になり、元気になっている。

 ――町長が未来志向だ。

 岩田 何もしなければ、町も残さなければならないものも残らない。だが、町長だけが元気でもだめだ。職員と町民と熱意を共有することが大事だと考えている。小さな町だからこそ、全員の顔が見えるし、思いを共にし、形にしやすい。最先端技術を活用しながら課題を解決し、誰もが幸せに、安心して住める、滞在できる町を実現したい。

 

岩田勉 すさみ町長

3月末に受け入れたワーケーションのトライアルも好評だった

     
 
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