嬉野観光ホテル大正屋(佐賀県嬉野温泉)はこのほど、大正屋、湯宿清流と、湯どうふなどを販売する「湯どうふ本舗」で8月28日から9月6日にかけて、椎葉山荘で6月26日から7月5日にかけて10日間の連続休館日を設定すると発表した。同休館期間中には希望者に対する福利厚生活動を実施。グループ全体で働き方改革を推進していく。
宿泊業界で、不規則な勤怠などを背景に優秀な人材の確保や定着が難しくなっている中、大正屋グループは社員の福利厚生向上の一環として今回の取り組みを行う。各施設での10連続休館中には、希望する社員を対象に海外旅行、国内旅行、日帰り昼食会などの福利厚生を付与する。今回の取り組みについて、大正屋副社長・山口剛氏に話を聞いた。
――10日間の連続体館日導入の経緯などについて。
「西九州新幹線の開業や嬉野市内での新ホテル開業の中で、観光人材ニーズが高まっている。人口が2・7万人ほどの嬉野市では新規採用がさらに困難になり、既存スタッフの流出防止も重要課題なのだが、給与アップも難しく、妙案を検討していた」
「義務化されていながら、有給休暇取得も難しいのが現実だ。しかし今回の連続10日間の休館により、日ごろ連休を取るのが難しい旅館業において家族とゆっくりできる時間を創出でき、働き方改革の一環になると考えた」
――導入や休館日設定の苦労などは。
「年間を通じて閑散期を調べ、各日程を設定した。同じ町内にありながら各施設が離れており、同時期に連続休館を設定してスタッフの交流を図ろうとしたが、当社グループ各施設に宿泊を希望するお客さまの受け入れ態勢を維持するため、日程をずらした」
――手厚い福利厚生の付与も決定した。
「海外旅行、国内旅行、日帰りの旅行などを設けた。スタッフの通常業務へのモチベーションと会社への愛着心がアップしてくれたらと期待している」
――10日間分の売り上げは非常に大きいものでは。
「もちろん金額としては大きく、今回の休館期間日程の昨年同期間の収入が消失してしまうわけだが、それよりもスタッフが大切だと考えた」
――今回の連続休館や福利厚生の付与について現場スタッフの反応は。
「『家族とゆっくり過ごせる、家族旅行ができる』『友人とたくさん遊べる』の声や、『10日間も連続で休んだことがないので、何をしたらよいか迷っている』のようなうれしい悲鳴をあげてくれるスタッフもいた。中には『大正屋に就職して良かった』との声も。今回の取り組みはスタッフのためであり、その先にはお客さまへのサービス向上も見据えている。同様の取り組みが宿泊業界に浸透してくれたらうれしい」