全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)東北ブロック協議会は3月21日、東京の衆議院第1議員会館で第3回原発風評被害賠償対策検討委員会を開き、民主党観光振興議員連盟、文部科学省など関係省庁、東京電力の代表者らと福島第1原発事故による風評被害の賠償問題について意見を交わした。旅館・ホテルと観光議連からは、福島を除く東北5県の風評被害の賠償がほとんど行われていないとして、被害への公正な賠償を東電に強く要望。原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償の範囲にかかわる中間指針の内容や表現が賠償が進まない一因とも指摘し、担当する文科省に対策を求めた。
原子力損害賠償紛争審査会が昨年8月5日に発表した中間指針では、福島、茨城、栃木、群馬の4県の風評被害が原発事故と相当因果関係があるとして、東電による賠償が行われるべきだとしている。このほか指針に示されていない地域の被害も事故と相当因果関係があれば賠償の対象になり得るとしている。その後、千葉県太平洋沿岸16市町村、山形県米沢市も東電から賠償対象に追加された。
ただ、この日出席した青森県旅館ホテル生活衛生同業組合の中村嘉宏理事長から、県内組合員が東電に賠償請求をしたにもかかわらず、支払いを拒否された実例をあげ、中間指針が取り上げた地域以外の賠償がいっこうに進んでいない現状に疑問を投げかけた。
賠償が進まない一因は中間指針の内容や表現にあると旅館・ホテル側は主張している。
山形県旅館ホテル生活衛生同業組合の佐藤信幸理事長(全旅連会長)は、中間指針で述べている「風評被害」「相当因果関係」などの言葉が抽象的で、「どこまでが原発事故の風評被害で、賠償の対象になるのかがはっきりしない」「我々は明らかに被害を受けているにもかかわらず、東電はなかなか認めない。風評被害を狭い範囲で解釈しているのではないか」と批判した。
ほかの旅館・ホテルと観光議連の出席者からも「中間指針に4県と明記されていることが、逆にほかの地域の賠償を妨げている」「立証の難しい風評被害の挙証責任を被害者に負わせるのは酷だ」「積極的な賠償をするよう、国がもっと東電に指導すべきだ」などの声が上がった。
東京電力の出席者は「風評被害は損害賠償の対象と考えるべきだが、被害のすべてが賠償の対象となり得るものではない」と述べた。ただ、観光議連の出席者から賠償の対象となる損害は具体的に何かと問われると、明確な回答は示せなかった。
文科省研究開発局原子力損害賠償対策次長の松浦重和氏は、賠償が拒否された場合の次の段階として原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てがあると説明したが、旅館・ホテル側の納得は得られなかった。
賠償の範囲や用語の解釈を巡り、旅館・ホテルと東電側の溝は深く、旅館・ホテルの納得いく解決に至るまではさらに時間がかかりそうだ。
福島を除く東北5県の旅館・ホテル組合代表、観光議連の川内博史会長らが出席した