全国修学旅行研究協会(全修協、岩瀨正司理事長)は7月26日、東京のホテルグランドヒル市ヶ谷で創立60周年記念式典と研究大会を開いた。修学旅行の安全性確保などを目的に1955年創立、1957年に財団法人として設立が許可されてから今年で60年を迎える。式典で岩瀨理事長が設立の意義を改めて強調したほか、引き続き行った研究大会では「修学旅行の過去・現在・未来」をテーマに旅行、教育関係者5氏がパネルディスカッション。脳科学者の茂木健一郎氏が記念講演を行った。
式典で岩瀨理事長は「修学旅行は第二次大戦後、困難な環境のもとでいち早く復活したが、劣悪な食料と交通事情の中で多くの事故が起こるなど、実施にはさまざまな困難がつきまとった。事態を憂慮した教育関係者によって『教育性の充実』『安全性の確保』『経済性の適正化』を目指して誕生したのがこの協会だ」と設立当時を述懐。「60年を機に、改めて設立の趣旨を心に刻まなければならない。これからも日本の学校教育振興に向けて取り組む」と述べた。
研究大会は第1部でシンポジウムを実施。「修学旅行の過去・現在・未来」をテーマに5氏の専門家が語った。
文科省初等中等教育局の坪田知広・児童生徒課長は平成32年度から実施される新学習指導要領に触れ、「『何を学ぶか』だけでなく、『どのように学ぶか』を明記したのが要領改正のポイントだ。修学旅行の意義がさらにクローズアップされるだろう」と指摘。
日本旅行業協会の越智良典理事・事務局長は「修学旅行は世界で類を見ない誇るべき行事。旅行会社は誇りを持って取り組んでほしい」、全日本中学校長会の直田益明会長は「これからのキーワードは『体験』。自分で考え、行動する経験が糧となるだろう」とそれぞれ述べた。
脳科学者の茂木氏は「脳の学びの機会としての修学旅行」と題して講演。「人は旅をすることで前頭葉が鍛えられる。不確実な出来事に対応しなくてはならないからだ。旅先で予想しなかった出来事に遭い、人生がいい意味で変わる。これが最高の修学旅行だ」と述べた。