修学旅行、従来のスタイルに 注目テーマは「SDGs」

  • 2022年10月24日

行き先は京都・奈良、東京へ

脚光浴びるか東北、北陸

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって中止や延期などに追い込まれた中学校の修学旅行だが、今年度は今のところ順調に実施されている。これまではコロナ対策の観点から行き先や内容などを変更して実施するケースが多かったが、学習目的を重視し、行き先は京都・奈良などを中心とする従来の修学旅行スタイルに戻りつつある。コロナ禍での修学旅行を振り返ったうえでこれからの修学旅行の動きを探った。

 

●20年度の状況

 全国修学旅行研究協会(全修協、岩瀨正司理事長)は、2020年度に実施された全国公私立高等学校・中学校の修学旅行の状況を調査し、その結果をまとめた報告書を2月に発行した。同書によると20年度の中学校修学旅行の実施率は、公立校が58.5%、私立校が25.7%で、公私を合わせ56.0%。生徒の参加率は公立が53.0%、私立が22.2%で、公私合計では50.7%だった。

 「文部科学省から中止ではなくて延期でという発出も出ていたので延期を2回、3回と繰り返してタイミング良く修学旅行を実施できた学校もあったが、中止に至った学校の方が圧倒的に多かった。最終的に43万人の中学生が修学旅行に行くことができなかった。中学校は基本的に3年生で修学旅行を実施する学校が多いので、修学旅行を経験できない子どもたちが出てしまった」と全修協。

 実施できた学校の旅行方面を見てみるとコロナ前の19年度には京都・奈良を中心とする近畿方面と東京ディズニーリゾート(TDL)を含む関東方面で全体の約7割を占めていたが、20年度は人との接触リスクを回避するためにこれらの方面が大きく減少。関西では飛行機を使って沖縄へ行く中学校も多かったのだが、「飛行機しか移動の方法がなく、もし何かあった時に不安だということがネックになって沖縄も激減した」(全修協)。

 一方、市区町村の教育委員会から県をまたいで旅行をしないでほしいと発出されたこともあり、行き先は県内や隣接県が増加。旅行方面は近畿、関東、沖縄を除くすべての方面が構成比を拡大した。

 傾向として、1泊や日帰りなど公共交通機関を使わないで行ける貸し切りバスでの短期間での旅行が多く見られた。

 修学旅行が中止になってしまった学校では、代替行事としてバーチャルやリモートでの修学旅行なども行われた。

●21年度の状況

 21年度の修学旅行の実施状況については、現在調査中でまだ数字は出ていないが、明らかに中止は減っているという。ただ、「旅行先はコロナ前の状況には戻っておらず、方面や日数を変えるなど工夫をして実施する学校が増えた。先生たちは21年度も京都・奈良などに行けなかった時のための準備として、事前に代替候補地の情報を集めていた」(全修協)。

 中学校では一般的に3年次に修学旅行へ行くが、2年次に行く県もある。そういう県の学校では20年度の修学旅行を延期したことにより21年度は、延期となった3年生と、2年生の2学年で修学旅行を実施するケースもあった。

●今年度の動き

 今年度については、「修学旅行シーズンである春先は、少しコロナが落ち着いていたのでほぼ予定通り修学旅行が実施された」と全修協。その後、コロナの第7波が到来。「9月から秋の修学旅行が始まるが、その学校が果たして無事に行けるかというのは注目して見ていかなくてはいけない。東京都内の学校も9月が多いので、心配な状況だ」と語る。

 方面は、コロナ前の形に戻ってきている。

●今後の予測

 これから修学旅行はどういう形で動いていくのか。「20、21年の経験で学校も旅行会社も、自治体や宿泊施設といった修学旅行の受け入れ側、輸送機関などもウィズコロナの修学旅行のやり方を学んだ。また、受け入れ自治体の方もコロナでかかる余計な費用への補助を出すなど、修学旅行を実施する学校に対して後押しをしてくれている。方向的にはいい方向に進んでいる」と全修協。

 旅行先については、「基本的にどの学校もコロナが収まれば元に戻したいと思っている」という。コロナ前のように京都・奈良などの近畿方面や関東方面に行く学校が多くなると見られる。長年続いてきた修学旅行の行き先には、歴史・文化、平和などそこで学ぶ理由があるからだ。

 一方、コロナ禍での代替の行き先として今まで行かなかったような方面に訪れた学校が多々あったことで、修学旅行先の傾向が変わる可能性もある。「初めて行ったが、案外良かったという学校の声も聞いた。自分の学校の生徒に何を学ばせようか、その学びをするのにはどこに行ったらいいのかという修学旅行の意義を改めて考えることができたという先生もたくさんいる。そこは少し変わってきた」(全修協)。

 今後、修学旅行の行き先として注目されそうな方面の一つは東北だ。東日本大震災の震災学習が実施できるほか、「白神山地」や「平泉」に加え、昨年は「北海道・北東北の縄文遺跡群」も世界文化遺産に登録されたことで脚光を浴びそうだ。
もう一つは北陸。北陸新幹線を利用できるので首都圏から行きやすい。首都圏の学校では京都・奈良に加え、北陸にも行く修学旅行のルートも考えられる。

 関西の中学校は航空機を使う学校も多いが、首都圏の中学校ではほとんど利用されていない。首都圏での航空機利用が拡大すれば、北海道や九州などへ行く学校が増えるかもしれない。

 変化の激しい社会に対応して課題を解決できるようになるための探究学習が重視されている。修学旅行の場でも探究学習が求められてきているが、そのテーマとして注目されているのが「SDGs」だ。修学旅行の行き先を決める際に、「SDGs関連の取り組みが充実していること」を条件として挙げる学校も増えてきている。

 全修協は「SDGsには平和や人権など17のゴールがある中で、課題解決型の探究学習のテーマとして一番取り組みやすいのは『環境』だ。自治体では環境に関するSDGsプログラムを一生懸命作っている」と話す。

 ある市町村で学校の先生たちにアンケートをとって修学旅行の学習目的を聞いたところ、今までは「平和」や「歴史」「文化」などが非常に多かったのが、「環境」が大きく増えたという例もある。

 気がかりな点は、燃料や食材などの高騰だ。修学旅行費用への影響が懸念される。

 
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