企業活動の課題解決に貢献  JTB取締役常務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長 大塚雅樹氏に聞く


宿泊施設のサステナビリティも重要に

 ――22年度のビジネスソリューション事業の取り組みと実績を伺いたい。

 「ビジネスソリューション事業全体で計画比34%増、19年度実績比21%増。コロナ禍の厳しいマーケット環境で、重点取り組み事項の一つ『ミーティング&イベント(M&E)』領域では、新たなテクノロジーの活用と、それを実現できる社員のスキル向上などが好成績につながった」

 「具体的には、イベント管理ソリューションの『Cvent(シーヴェント)』に関する知見を、営業担当者が習得したことが挙げられる。Cventは、イベント管理ソリューションとして、グローバル企業で広く活用されており、スムーズなイベント運営に加えて、イベントのコストマネジメントにも有効だ。われわれは、日本マーケットにおいて、このソリューションを優先的に販売することが可能なため、その強みを生かして営業を推進してきた」

 「マーケティング施策では、われわれのソリューションをお客さまに訴求するイベント『JTBビジネスソリューションEXPO』の開催が事業全体の成果につながった。お客さまとの関係性強化につながる取り組みによって、23年度に実施する周年イベントや大型インセンティブの獲得が進んできている」

 ――ビジネスソリューション市場の23年度の見通しについては。

 「市場回復率は19年度比95%と予測している。『旅行事業』での海外表彰式やインセンティブ旅行は回復傾向が緩やかで、76%と見込んでいる。その一方で、M&Eは19年度を上回ると見込んでおり114%で計画している。旅館での試飲プロモーションなど、旅をテーマとした『プロモーション事業』は、コロナの収束を受けて伸長が期待でき、104%で計画している」

 「『BTM(ビジネストラベルマネジメント)事業』は、19年度比で72%を計画している。第1四半期の見込みでは、国内出張は19年度比と同水準で推移している一方、海外出張は、19年度実績までの回復には及ばず、上期は厳しい状況が続くと想定している」

 ――そういう環境下で23年はどういった取り組みを行っていくのか。

 「企業活動の課題解決に資する『ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)戦略』を基本的な営業方針としており、ターゲットとして定めたお客さまへ徹底的に寄り添っていく。最重要ターゲット層の『Tier1』は、22年度の27社から24社に減らしているが、1社1社に対しては、これまで以上に深く寄り添っていき、1社ごとのビジネス総量を増やしていきたい」

 「M&Eについては、社内・社員向けの『顧客インナー課題』と、社外・顧客向けの『顧客アウター課題』という二つの戦略視点を持っている。顧客インナー課題は、周年・表彰イベント、新入社員研修といった階層別研修などの領域となる。顧客アウター課題は、エンドユーザーや販売店に対する旅行やミーティングイベント、コンベンション、プロモーションなどになる。この領域には、CVENTの提案を必ずしていきたい」

 「『EVP(エンプロイー・バリュー・プロポジション=従業員価値提案)』の領域では、資本となる従業員への投資強化によって企業の成長を実現していくことを国が推奨している中で、われわれもABMクライアントから『人的資本開示』に対するサポートを求められている。組織分析サーベイや社員アンケートツールなどが組み込まれている組織パフォーマンス改善クラウド『WILL CANVAS(ウィルキャンバス)』を活用して、企業の課題抽出に向けて取り組んでいる」

 「サステナビリティも重点取り組み事項となる。具体的には、MICEを開催する際に、その会場で使用される電気を再生可能エネルギーに置き換えるサービス『CO2ゼロMICE』を開発し、お客さまや事業パートナーに提案している。さらに、ABMクライアントの次期経営層を参加対象として、持続可能な社会の実現に向けた実践的アイディアを創出するプロジェクト『GSP(グローカル・サステナビリティ・プロジェクト)』を開始している。22年度はサステナビリティをテーマとして、沖縄県・恩納村と北海道・阿寒へ訪問し、参加者が地域での実体験から得た知見と自社のリソースを掛け合わせたアイディアの創出に取り組んだ。23年度も和歌山白浜町と大分県日田市で開催する」

 ――旅ホ連と連携した取り組みは。

 「近年、企業からサステナビリティ観点を提案要素に含める要請が増加している。ともなって、当社が企業への提案時には各旅館・ホテルのサステナビリティへの取り組み内容を示すことがある。われわれは、旅館・ホテルと一緒にCO2排出抑制の方法や排出後の対応(カーボンオフセットなど)について考えていきたい。旅館・ホテルのサービスへの評価は、これまで客室や料理、温泉などが主だったが、それにフードロスへの対処方法や消費電力の削減への対応方針などサステナビリティへの取り組みが加わる。旅ホ連の皆さまと徹底的にコミュニケーションをして、このような情報を蓄積してデータベース化していきたい」

 「われわれは大企業との接点を持っているため、平日稼働に寄与する研修やミーティング、プロモーションを大企業へ提案することが可能だ。例えば、旅館を貸し切りにして、期間中、その企業の色に染めてしまうなど、旅館側と企業側がWin&Winになる提案を旅ホ連会員の皆さまと一緒に考えていきたい」

 
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