観光庁や東北6県などは2日、仙台市のホテルメトロポリタン仙台で、「東北観光がんばります!~東日本大震災から3年~シンポジウム」を開いた。6県の知事や東北の観光関係者ら約500人が参加、パネルディスカッションなどを通じ、官民一丸となって観光振興による復興を加速させる決意を確認し合った。
観光庁の久保成人長官は「観光面からの復興支援に官民全てが加速的に取り組むべきだ」と訴えるとともに、昨年1千万人を突破した訪日外国人旅行者について「観光復興の重要な柱」と述べ、東北に呼び込む必要性を強調した。
シンポジウムではJR東日本の清野智会長が基調講演し、菅原茂気仙沼市長が観光の取り組み事例を紹介した。
清野会長は震災後実施したデスティネーションキャンペーン(DC)の意義や成果を述べる一方、4月から釜石線で週末を中心に運行を始める「SL銀河」などを紹介し、列車運行による地域活性化に意欲を示した。
菅原市長は観光戦略会議の設置(12年3月)や観光に関する戦略的方策の策定(13年3月)などを実行し、入り込み客数を10年以内に330万人(震災前260万人)、宿泊者を62万人(同21万人)にする考えを明らかにした。また、水産業と観光産業の連携を強めるため、15年度に完成予定の魚市場では「旅行代理店や料理教室と提携したキッチンスタジオや見学者デッキを設けるなど、斬新なアイデアを盛り込む」と述べた。
「東北の観光の未来と可能性」をテーマに、6県知事と土井亨国土交通大臣政務官(衆院宮城1区)がパネル討論。
青森県の三村申吾知事は「鉄道や空、海での移動をフル活用した立体観光の推進に力を入れる」とした上で、「国の観光予算が100億円程度では足りない」と増額を求めた。岩手県の達増拓也知事は「県全体として観光は震災前に戻ってきているが、津波被災地域は6割程度の回復にとどまっている」と現状を報告、「大型宿泊施設の再建はほぼ終え、沿岸地方の観光はこれから」との見通しを示した。
宮城県の村井嘉浩知事は海外からの観光客の減少を課題に挙げ「仙台空港の民営化など、民間の力やアイデアを生かして呼び込みたい」と述べ、秋田県の佐竹敬久知事は「観光、文化、スポーツを一体的に捉え、施策を展開する。またイベント誘致にも力を入れる。震災前まで来ている。もう一押しだ」と強調。
山形県の吉村美栄子知事は「6~9月の山形DC後を見据え、『おもてなし山形観光条例』を制定したい」と意欲を示し、福島県の佐藤雄平知事は「原発の汚染水トラブルが発生するたびに旅館・ホテルの宿泊キャンセルが出ている」と指摘、原発事故の収束が県観光の最大の課題とした。また、教育旅行の回復の重要性にも言及した。
ガッツポーズを披露する6県知事ら