人手不足対策など提言 立教大学観光学部が20周年シンポ


5氏によるパネルディスカッション

 立教大学観光学部は11月24日、同大学新座キャンパス(埼玉県新座市)で観光学部と観光学研究科開設20周年記念シンポジウムを開いた。「観光の近未来を展望する」をテーマに、同大学OBの観光業に携わる各氏らが講演とパネルディスカッションを行った。人手不足が叫ばれる旅館・ホテル業界に対しては「サービスの質と集客力を高め、働く環境を改善し、人材を定着させるという好循環をつくる必要がある」と説いた。

 同大学OBで東京ステーションホテル総支配人の藤崎斉氏が「ホテル業界から見る観光の近未来展望と課題」をテーマに講演した。

 藤崎氏は国内のホテル開発の問題点を指摘。2020年までに新規供給されるホテルの92%が宿泊以外の付帯施設を最小限とする宿泊主体型ホテルであることを取り上げ、「宿泊に対するニーズが多様化している。同じようなホテルを量産することは(消費者の)ニーズに対応することにならない」「わが国は海外に比べて5つ星ホテルの数が少ない。フルサービスのホテルがないとMICEが動かない。アジアの他の都市にコンペで負けている」と、さまざまな経済効果を生むラグジュアリーホテル開発の必要性を説いた。

 パネルディスカッションではパネリスト4氏とモデレーター(麻生憲一・立教大学観光学部観光学科教授)が登壇。立教大学観光学部観光学科教授で同大学観光研究所所長の東徹氏は宿泊業の課題の一つ、人手不足を取り上げ、「サービスの質を向上させ、集客力と収益力を高め、働く環境を改善し、人材を定着させ、従業員のスキルを向上させるという好循環をつくる必要がある」と提言した。

 また宿泊施設のサービスが劣化しているとの消費者の声に対し、「サービスの提供力とともに受容力が劣化している。サービスを受ける側にもサービスの意味を教育する必要がある。日本でラグジュアリービジネスが進化しないのは、サービスを提供する側がマスに受けるビジネスに力を入れ過ぎたからだ」などと述べた。

 台湾師範大学観光大学院副教授の林伯修(リン・ポショ)氏は外国人から見た日本の魅力として「伝統とモダンの両方がそろっている」と指摘。一方、国内観光の問題点として社会人が休暇を容易に取れない点を挙げ、企業経営者らの価値観の変化を促した。

 対馬市しまづくり推進部(長崎県)係長の前田剛氏は、人口の11倍の外国人観光客が昨年1年間で対馬に来ている状況を説明。「インバウンドに依存せざるを得ない状況だが、それにはリスクが大きい。国内需要を安定させないといけない。体験型、着地型の観光に力を入れていく」と、地域の観光振興の取り組みを述べた。

 ANA Cargoグローバスネットワーク部アライアンス推進課の王熙渊(オウ・キエン)氏は、提供座席数が毎年5~6%増えているにもかかわらず、利用率が高い水準で推移している航空業界の近年のトレンドを解説した。


5氏によるパネルディスカッション

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒